オーストラリアのビール業界がどのようなものなのか。その全体像が分かるようにこのページではポイントとなる概要のみをすべて網羅して紹介。詳しくは詳細を紹介している各ページでご確認ください。
まずは次のポイントを!
- オーストラリアのビール業界は寡占でメーカーはたった3社のみ!しかも日系企業に支配されている!
- オーストラリアで最も有名なビールはビクトリアビター(Victoria Bitter)、通称VB(ブイビー)と呼ばれるものでその次に フォーエックスゴールド (XXXX GOLD)が続く。ただし2024年現在、最も売れているビールはこれとは異なる。
またオーストラリア国内の認知は「オーストラリアのビール=フォスターズ」ではない! - 各ビールブランドは地域との結びつきが非常に強い。日本にはない特色だ。
- 2000年頃からクラフトビールと呼ばれる地ビールが急速に発展、2010年代頃からは各メーカーを脅かす存在に。慌てた大手は2010年代後半ごろから有名地ビールメーカーの買収に走る!
- オーストラリア人はビールが大好き。しかしビールの消費量は年々減り続けている
- 日本と違ってオーストラリアでは非常に多くの種類のビールが飲まれている
- オーストラリアのビールの歴史はオーストラリアの歴史そのものだ!
- ジンジャービアなるビールが存在する!
以上の8項目を知ってあなたもオーストラリアビール通の仲間入を。
ここからは各項目の詳細について説明します。(ページ内リンクの関係上、この下に、上のポイントと全く同じ目次が出ますすみません。)
オーストラリアのビール業界は寡占でメーカーはたった3社のみ!
しかも日系企業に支配されている!
「オーストラリアのビール業界は寡占だ。大手メーカーは以下、たった3社のみの存在となる!」
それらは以下の通り。
- ビール大手シェア第一位の企業:カールトン アンド ユナイテッド ブルワリーズ
- ビール大手シェア第二位の企業:ライオン
- ビール大手シェア第三位の企業:クーパーズブルワリー
実は上記の表現は、西暦2000年頃まではこのような形でほぼ間違いなかったのだ。しかしグローバル化が進む現代では世界中の大手ビールメーカーが各国のビール会社を買収するという事態が多く発生しており、単純にこのビールはこのメーカーによってつくられていると一言で表しにくい状況が発生している。
オーストラリアも実際そのような状況になっているが、いったんまずは上記で問題ないと考える。
日本ではキリン、アサヒ、サッポロ、サントリー、オリオンの大手5社により国内ビールシェア99%以上を占めるがオーストラリアでは上記3社で約90%のシェアに迫る。
さて、上記3社中の2社、カールトンアンドユナイテッドブルワリーズ(Carlton & United Breweries (CUB) (通称「シー・ユー・ビー」))とライオン(Lion)、実はそれぞれ別にオーナー会社が存在する。カールトンアンドユナイテッドブルワリーズの親会社は日本のアサヒグループホールディングスで、ライオンの親会社は同じく日本のキリンホールディングス、である。
実にこの2企業でオーストラリア国内ビールシェアの80%以上を占める。まさにオーストラリアのビール業界は日系企業(アサヒとキリン)によって支配されていると言ってよい*。
*2022年、ライオンが40%台、CUBが42%をごくわずか上回るくらいのシェアを握っている。出典:https://www.statista.com/statistics/1225527/australia-brewery-market-share-by-price-range/#:~:text=In%202020%2C%20the%20market%20share,as%20XXXX%20Gold%20and%20Furphy.。
- カールトン アンド ユナイテッド ブルワリーズ 日本のアサヒホールディングズが保有
- ライオン 日本のキリンホールディングスが保有
大手ビール企業において唯一クーパーズブルワリーだけが純粋なオーストラリア企業として存在している。
本企業は、単独の家系による同族運営が続けられており、シェアは上記CUB、ライオンに比べると圧倒的に劣る5%程度となるが*、それでもオーストラリア国内では超有名メーカーであり、人々の認知は完全に大手ビール会社に位置づけられる。
*2022年現在実績
一方、オーストラリアも2000年代ごろからマイクロブルワリーが造るクラフトビールの波が訪れ、大手メーカーもこれらを無視できない存在にまで成長を続けた。慌てた大手メーカーも続けてこれら有名どころのマイクロブルワリーを買収するという皮肉な状態に陥っている。
詳しくはオーストラリアのビールメーカーのページを参照頂きたい。
ところでオーストラリアのビールはイギリスの開拓によって持ち込まれたのが始まりとなり、かつてはその歴史の中で非常に多くのビール醸造所が存在した。
その中には素晴らしいビール会社や今でも歴史に名を連ねる醸造所が多数存在する。本サイトではそのような歴史あるビール会社について随所で補足している。
オーストラリアで最も有名なビールはビクトリアビター(Victoria Bitter)、通称VB(ブイビー)と呼ばれるものでその次に フォーエックスゴールド (XXXX GOLD)が続く。ただし2024年現在、最も売れているビールはこれとは異なる。
またオーストラリア国内の認知は「オーストラリアのビール=フォスターズ」ではない。
日本で最も有名なビールと言われればシェアナンバーワンの「アサヒスーパードライ」となることに異論は無いだろう。
同様にオーストラリアで最も有名なビールと言えば歴史上支配的な地位を築き上げてきた「ビクトリアビター(VB)」という製品でその次に有名なのが「XXXXゴールド(フォーエックスゴールド)」と呼ばれる製品である。
しかし何事にも永遠は存在しないのだ。
2010年代前半まではその他製品も含め多少の順位の入れ替えはあったものの、VB、XXXXゴールドのその存在感は変わらなかった。しかし2010年代後半から少しずつシェアを落とし、2019年頃(正確なデータなし)、グレートノーザン・ブルーイング・コー(Great Northern Brewing Co.)というブランドにその順位を譲った。それ以来VBとXXXXゴールドのツートップ体制は崩壊。2022年現在までグレートノーザン・ブルーイング・コーのトップが続いている。
2022年現在、オーストラリア国内のビール売り上げトップは以下の通り。
- グレートノーザンブルーイング コー(Great Northern Brewing Co)
- カールトンドライ(Carlton Dry)
- XXXX(フォーエックス)ゴールド(XXXX Gold)
- クーパーズ(Coopers)
- ビクトリアビター(Victoria Bitter)((VB(ブイビー))
- コロナ(Corona)*オーストラリア国外ビール
- トゥーイーズ(Tooheys)
- ハーン(Hahn)
- ピュアブロンド(Pure Blonde)
- アサヒ(Asahi)*オーストラリア国外ビール
大変細かい話だが、上記売り上げランキングだが製品単品とシリーズ(ブランド)、又はブルワリーが混在しており大変あいまいである。しかし資料を探してみたがすべて単品のビールのみで発表されているランキングは見つけられなかった。例えば2位の「カールトンドライ」は単品ビールだが4位の「クーパーズ」はブルワリー名(と同時にシリーズ名)、トゥーイーズはシリーズ名でクーパーズやトゥーイーズにもたくさんの酒類が存在する。ブルワリー名、やブランドで示されている順位はその中のフラグシップ製品と仮定しそれぞれリンクを貼っておいた。
また「オーストラリアのビール=フォスターズラガー」と認知される方も少なくないがこれは誤りである。フォスターズラガーはオーストラリア国内での認知はもちろんあるもの実際の購入はほとんどなく、誰にも見向きもされないビールとしてひっそり存在している。詳しくはフォスターズラガーのページを参考に。
各ビールブランドは地域との結びつきが非常に強い。日本にはない特色だ。
ビールブランドについてオーストラリアの人々はそのブランドがどこの州のどの都市で作られているものかを気にする。ビールの紹介がなされるときや、勿論普段の会話等でも焦点が当てられる事が多い。
これは日本ではなかなか見られない独特な文化であるが日本でも「オリオンビール」を語る時に唯一それが当てはまるのではないかと思う。つまり「オリオンビール=沖縄のビール」という認知があるのではないだろうか。
これと同じことがオーストラリアの多くのビール製品で起きているのだ。
オーストラリアではそれが更に根付いていると考えていただきたい。
例えばカッスルメインパーキンス(CASTLEMAINE PERKINS)という醸造所が保有するXXXX(フォーエックス)という有名なビールブランドがある。
このXXXXはクイーンズランド州のブリスベンというところにある工場にて製造される。
またスワン(Swan)というブランドは西オーストラリア州、パースにあるビール会社で作られる。
人々は会話の中でそれを気にしたりするのだが、例えばXXXXを指して「これはクイーンズランドのビールだよね。」だとか、「スワンってどこで作られるビールだっけ?」「パースだね。」等といった会話を楽しむ。この点は日本と大きく異るところである。
このように語られるようになった理由は、1901年、連邦国家としてのオーストラリアが誕生するより以前はそれぞれの植民地化された地域が独立した法律を持ち統治されていた為だ。
アルコールに関する法律もまた例外では無く、酒類の生産や販売はそれぞれの地域(州)のルールに従っていた。
また食料品や特産物もまたその土地に根付いたものが生産されておりビールも同様地域ごとに独立して進化を遂げていった。
1800年代の終わり頃にようやく鉄道が発達を始めたが、それ以前のオーストラリア大陸では商業のための往来には船が用いられた。
そのような状況であった事から、たとえ当時その地域に於いて最大のビール会社であったとしても現在のようにオーストラリア全土にまんべんなくビールを運ぶことが困難な時代が続いた。
地域が変われば飲めるビールはほぼそのエリアで造られるもののみだった。これが歴史的に根付きその習慣が現在まで残った。
そして例えば、スワンと言えばパース。XXXXといえばブリスベンなどと土地とセットで語られることが今なお続いている。
ビールの消費量はやはりその土地に根付いたブランドがその他の土地に比べ圧倒的多くなっている。
一般的には以下のブランド又はビール単品が次の地域として認知されており、オーストラリアビール通ならば最低でも抑えておきたい内容である。
ちなみに2020年代にもなると交通網の発展、インターネットの発展、情報共有化などにより地域に根付いたブランド意識は昔に比べずいぶん薄れているものになっている。特に若者の間ではその意識は薄い。
しかしこの時のいわゆるおじさん世代は以下のようなイメージをいまだに持っている。また市場から姿を消した製品も多いのだが昔を懐かしみながらやはり各州では下で紹介する製品が今でも語られるのである。
New South Wales(ニューサウスウェールズ州)(NSW)
- トゥーイーズ(Tooheys) (シリーズ)
- レシャス(Reschs) (単品)
- ハーン(Hahn) (シリーズ)
- ジェームズ・スクワイア(James Squire) (シリーズ)
- ケー・ビー・ラガー(KB Lager)(単品)(廃版)
Northern Territory(ノーザンテリトリー)(NT)
- エヌ・ティー ・ドラフト(NT Draught) (単品)(廃版)
Queensland(クィーンズランド州)
- XXXXシリーズ(シリーズ)
- パワーズ(Powers) (単品)
South Australia(南オーストラリア州)
- クーパーズ(Coopers) (シリーズ)
- ウェストエンド(West End) (単品)
- サザーク(Southwark)(単品)
Victoria(ビクトリア州)
Western Australia(西オーストラリア州)
Tasmania(タスマニア州)
- タスマニア州北部: ボーグズ(Boag’) (シリーズ)
- タスマニア州南部: カスケード(Cascade) (シリーズ)
*タスマニア州の北部、南部まで語られることはあまりない。
2000年頃からクラフトビールと呼ばれる地ビールが急速に発展、2010年代頃からは各メーカーを脅かす存在に。慌てた大手は2010年代後半ごろから有名地ビールメーカーの買収に走る!
「オーストラリアのビールメーカー」のページで説明しているとおりオーストラリア国内にも日本で言うところの地ビールを制作するような小さなビール会社が存在し、それらは「クラフトブルワリー(Craft Brewery」、「マイクロブルワリー(Micro Brewery)」と呼ばれ、そこで作られるビールはまた「クラフトビール(Craft Beer」などと形容される。
2010年頃以降、オーストラリアのマイクロブルワリー(クラフトビールを作る小規模な醸造所)は急速に成長し始めた。それまでクラフトビールのシェアは極めて小さかったが、近年では多くのマイクロブルワリーが高品質なビールを提供し、人気が爆発的に増加していった。一方で、ビール全体の消費量は減少しているため、クラフトビールの成長は大手ビール会社にとって脅威となっていったのだ。
このクラフトビールブームに対応するため、大手ビールメーカー(ライオンおよびCUB)は成長著しいクラフトブルワリーを買収する動きを見せている。実際にこれまでに多くの有名なクラフトブルワリーが大手2社の傘下に入ることとなった。
少々古いデータとなるが各年の大手ビール会社のビールとクラフトビールの消費金額は以下のとおりである。
| 分類 | 2013年-2014年 | 2017年-2018年 |
| 大手ビール会社のビール | 93億 豪ドル | 87億 豪ドル |
| クラフトビール | 11億豪ドル | 13億豪ドル |
オーストラリア人はビールが大好き。しかしビールの消費量は年々減り続けている
オーストラリアはかつては世界有数のビール消費大国だった
オーストラリア人はじつにビール大好きな国民といえ、かつては世界でも有数のビール消費大国だった。
パブへ行けばそれこそ水のようにビールをがぶ飲みし、グラスを重ね続ける。
ビールはオーストラリア国内で最も飲まれているアルコール飲料で、アルコール販売額約140億ドルのうちの約4割をしめる。
また国民1人辺りの年間ビール消費量は2010年頃までは100リットルを超え、世界のビール消費量ランキング1でも常に10位以内という上位に名前をつらねた。
かつて1960年台では国内のビール消費は全アルコール消費量のうち70%近くにのぼった。
そんな時代があったのだ。
しかしながら国民1人辺りのビール消費量は年により例外はあるものの、トレンドとしては毎年減少を続け、2016年では約89.5リットルまで落ち込み、その際の順位は大きく後退し20位以下という結果となった。
かつて誰もがビール一辺倒だった時代から文化の成熟により好みが別れていったためだとも考えられるが、特にワインの消費が増えたため相対的にビールの消費量が落ちた事やライトビール消費量が減少してきた事に起因している。2
ビール消費量の低下今後も続いていくと考えられている。
ちなみにビールの次に飲まれているアルコール飲料がワイン、そのあとにスピリッツ(蒸留酒)とつづく。
日本国内でも若者のビール離れが叫ばれるが、オーストラリアでもまたビールの消費が落ち込んでいるということはしばしばニュースになったりもしている。
ビール消費量減少のトレンドはこれからも続いていくと考えられている。
以下オーストラリアのビール消費に関する数値情報を掲載。
オーストラリア国内に於けるアルコール消費金額とビールの割合
| 年 | 国内アルコール消費金額 | ビールの割合 |
| 2006 | 131.0億豪ドル | 44.9% |
| 2007 | 137.6億豪ドル | 43.8% |
| 2008 | 139.4億豪ドル | 43.9% |
| 2009 | 140.5億豪ドル | 44.4% |
| 2010 | 141.6億豪ドル | 43.3% |
| 2011 | 142.2億豪ドル | 41.8% |
| 2012 | 141.0億豪ドル | 41.2% |
| 2013 | 141.7億豪ドル | 40.8% |
| 2014 | 142.0億豪ドル | 41.1% |
| 2015 | 140.6億豪ドル | 39.5% |
| 2016 | 145.5億豪ドル | 39.9% |
オーストラリア国民一人あたりのビール消費量と世界の順位
| 年 | ビール消費量(L) | 順位3 |
| 1976 | 142 | 2 |
| 1988 | 113 | 7 |
| 2006 | 107.5 | |
| 2007 | 107.3 | |
| 2008 | 107.0 | |
| 2009 | 106.6 | |
| 2010 | 103.5 | |
| 2011 | 100.5 | 8 |
| 2012 | 96.5 | 11 |
| 2013 | 93.0 | 15 |
| 2014 | 92.4 | 19 |
| 2015 | 86.5 | 22 |
| 2016 | 89.4 |
日本と違ってオーストラリアでは非常に多くの種類のビールが飲まれている
日本国内では、今でこそエールやIPAなどの種類が知られるようになったものの、かつては売られているビールのほとんどが下面発酵という製法で造られている「ラガータイプのピルスナースタイル」であった。
オーストラリアではふるくからエールやラガーを中心にスタウト、ポーター、ボック、その他非常に多くの種類(スタイル)のビールが飲めるというのが特徴である。
その為われわれ日本人がオーストラリア訪問の際、酒屋にて適当に選んがビールを購入すると、その都度全く異なる味わいに驚かされることがある。
また日本では上面発酵の「エール」などは値段が高めであることが多いが、オーストラリアではどのスタイルもまんべんなく販売されており、それらによる値段の大きな違いはない。
オーストラリアでよく飲まれるビールの種類はビールの種類のページを参考に。
オーストラリアのビールの歴史はオーストラリアの歴史そのものだ!
1901年、連邦国家としてのオーストラリアが誕生する(建国日)が、ビールについてはそれ以前、オーストラリア入植時代にまでさかのぼる。
詳しくはオーストラリアビールの歴史のページを参考に。
ジンジャービアなるビールが存在する!
元々はイギリスで誕生したジンジャービア(日本語では「ジンジャービール」)であるが、オーストラリア国内ではアルコールの無いジュースに加え、アルコール入りの本格的ジンジャービアも多数生産されており大変ポピュラーである。清涼飲料水としての「ジンジャービア」では、オーストラリアには世界的にも有名な「バンダバーグ・ジンジャービア」という成否が存在している。
ジンジャービアについて詳しく、またジンジャービアとジンジャーエールの違いについても以下のページで詳しく紹介しています。


