- 現在でも「南オーストラリア州のビール」と認識され南オーストラリア州内では特に人気が高い
- 登場時期は1938年と比較的古い。現在の親会社LIONの粋な計らいで残っているブランド
- いつ絶滅してもおかしくないブランド。見かけたら絶対に飲んでほしい!
基本情報

名称 | サザークビター (Southwark Bitter) |
産地 | かつては南オーストラリア州 アデレード 現在は明記無し |
ビアスタイル | ラガー |
アルコール度数 | 4.5% |
IBU | No Data |
EBC (SRM) | No Data |
タイプ | フルストレングス |
醸造所 | かつてはウエストエンドブルワリー 現在は明記無し |

サザークビター概要説明
サザークビターはオーストラリアビール販売シェア第二位を誇るライオン(LION)が販売するブランドの1つ。かつてはウエストエンドブルワリー(West End Brewery)という醸造所で醸造され、またウェストエンドブルワリーを保有していた会社は、現在でもビールの歴史上語られるサウスオーストラリアブルーイングカンパニーという企業であった。
サザークビターという名称のビールが誕生したのは1938年。当時のサウスオーストラリアブルーイングカンパニーがウォーカービルブルワリー(Walkerville Brewery)を買収した際に、ウォーカービル社の保有するビール、ネイサンビター(Nathan Bitter)をサザークビターに変更した事に始まる。ちなみにネイサンビターは1928年に南オーストラリア州で製造販売されたため、同一製品は1928年から存在するといっても過言ではないかもしれない。このネイサンビターは販売してすぐに南オーストラリアで大変な人気を獲得し、その後オーストラリア全土で販売されるようになった。しかし2024年現在では南オーストラリア州以外での入手はそれほど簡単ではないようだ。
イギリスではビールの名前に「ビター」とつくものはペールエールのスタイルであることが多い。しかしここオーストラリアでは「ビター」と名前が付くものの多くは、実際は「ラガー」に分類される。本サザークビターも実際はラガースタイルでアルコール度数は4.5%のするストレングスだ。
味わいについてはいろいろな表現があるが実際に大手メーカーが造る大量生産向けビールであることは否めない。オーストラリアビール最大手のメーカー、カールトンアンドユナイテッドブルワリーズはオーストラリア国内の大手有名ブランドをことごとく吸収してきたが、その多くの歴史あるブランドを廃版に追い込んだ。しかしライオンは少し様子が違い、古いブランドをどちらかというと残す傾向にある。
このサザークブランドも、それを醸造する南オーストラリア州内のブルワリー、ウエストエンドブルワリーは閉鎖され、その製造は他州へ移された。実際はもはや南オーストラリア州のビールではなくなっている。いつ無くなっても全くおかしくないブランドなのだ。そんなブランドを現在でもなんとか残してくれていることに乾杯したい。
ありがとうライオン!これからもサザークを絶対に残してください!!
サザークビターの味わい
それでは本製品、サザークビターの味わいに迫っていこうと思う。
グラスに注がれるサザークビターは比較的クリーミーで程よい厚さの泡を演出してくれるが、ほどなくして薄目のレイヤーへと姿を変える。立ち上る香りはやはりというか、あまり感じられないが、どことなく大量生産系メタリックなスイートコーンのヒントを得ることができる。しかしどこか探り当てるとわずかながら石鹸のようなさわやかな香りもうかがい知ることができる。
口に入れるとどうだ。それほど悪くない印象だ。カラメルとまではいかないが麦芽の甘さがしっかりとあり、またホップの苦味も大手大量生産のそれらと比べてもしっかりとしたものが感じられる。後味にはナッツのような風味を残すが同時に香りで受けた印象、メタリックな感触も口につく。これをいいととらえるか、悪いととらえるかは個人の好みにゆだねられるところだろう。そして最後にやはりやさしい甘さが余韻を残す。うむ。なるほど悪くない。南オーストラリア州の人々を虜にしたのもうなづける完成度だ。
全体的にはやはりオーストラリアで好まれているビクトリアビターやトゥーイーズニューといったラガービールに系統は似ている。しかし本製品はビールがぬるくなってくるとメタリックな味わいが前面に出て大変に嫌な印象を残す。ゆえに、やはりキンキンに冷やしてノド越しでグビグビと行くのが正しい飲み方なのかもしれない。
いつまで存在するかわからない本製品、これを飲むことはオーストラリアの粋な生き方の1つなのだろう。見かけたら絶対に手に取ってほしい逸品だ。