アルコール含有量によるビールの分け方
日本ではあまりなじみがありませんが、オーストラリアではビールの分類方法の1つとして、アルコールの含有量によっておおまかに分ける方法が浸透しています。
アルコールの含有量によって3つの呼び方(種類)があり、さらにノンアルコールを加えた「3つ+1」となります。
- フルストレングス(FULL STRENGTH)
- ミッドストレングス(MID-STRENGTH)
- ライト(LIGHT)
- ノンアルコール(Non-alcoholic)
「ストレングス(Strength)」は英語で「強さ」という意味で、本来アルコール度数だけに使われる単語ではありませんが、ビールに関して「ストレングス」と言えば、アルコールの強さを示しています。
ここでは、それぞれの種類に加え、2000年初頭からオーストラリアでも流行りだした「ロー・カーボ(Low Carb)(低炭水化物)ビール」について詳しくご説明します。
1.フルストレングス(FULL STRENGTH)
フルストレングスは、いわゆる日本で言う普通の「ビール」を指し、一般的にはアルコール度数4.5%~6%のビールがこの分類に入ります。
何も言わずに「ビール」とだけ言う場合、一般的にはこのフルストレングスを指しますが、場合によっては下のミッドストレングスも含むことがあります。
フルストレングスのビールは最も種類が豊富で、さまざまな味わいのものがあります。
これらの普通のビールは「Full flavoured beer(フルフレーバードビール)」や「Full flavour beer(フルフレーバービール)」と表現されることもあります。
下の例は「ビクトリアビター」というビールのラベルで、「FULL FLAVOUR」と表記されているのが確認できます。
*オーストラリアやイギリスでは「flavor」や「flavored」のスペルはそれぞれ「flavour」、「flavoured」と表記される。

フルフレーバーという表現が示すとおり、フルーティーな香りが強いもの、味が濃いもの、またアルコール度数を高めて力強さを演出したものなどがあります。
その一方で、あえて香りを抑えて苦味やビールらしさを強調した飲みにくいタイプも存在し、それもフルフレーバーと表現されることがあります。
実際には、ラベルに「フルストレングス(Full Strength)」と明示している製品は少ないですが、「Full flavoured beer」などの説明があれば、それがフルストレングスであるとすぐに認識できます。
2.ミッドストレングス(MID-STRENGTH)
ミッドストレングスは、フルストレングスより少しアルコールが低いタイプです。
ただし明確な度数の定義があるわけではなく、一般的には3.5%前後が多いですが、4%でもミッドストレングスとして販売されることもあります。
日本には「中アルコールビール」という分類が存在しないため馴染みがありませんが、オーストラリアではこのミッドストレングスがしっかりと文化に根付いています。
1990年代にはすでにビール市場で約10%のシェアを持ち、2024年現在では27%程度に拡大していると言われています。世界的に見ても、この分野の市場が最も盛んな国のひとつです。
*情報ソースURLはページ一番下に掲載
ほとんどのビールブランドが、フルストレングスに加えてミッドストレングスもシリーズに含めており、それだけオーストラリアで認知されていることがわかります。
すでに市場に定着しているものの、国民1人あたりの消費量や国内総消費量はわずかに増加を続けています。
ミッドストレングス(Mid-Strength) 製品にはそれらがミッドストレングスとわかるように製品名に「ミッド(Mid)」の文字を入れ、ボトルや缶のラベルに大きく表示されているものも存在しています。
下の例はオーストラリア国内最大ビールメーカー、カールトン&ユナイテッド ブルワリーズ(Carlton & United Breweries(CUB))の、カールトンミッド(Carlton Mid)です。その名もズバリな商品名としており、見た目にもミッド製品であることがすぐにわかるようになっています(下写真)。

その一方で、アルコール度数を確認しない限り製品名からはミッドストレングスだと想像がつかないものも多数存在しています。
代表例は、ライオンというメーカーから販売されオーストラリアで最も有名なビールの1つと言われる「フォーエックスゴールド(XXXX GOLD)」でしょう。こちらはそのラベル上で「フルフレーバード(Full Flavoured)」とうたっておきながら実際はアルコール度数3.5%のミッドストレングスに分類されます。(下、図赤丸内、フルフレーバードの表記が見て取れる)
これらのことから、実はミッドストレングスと意図せずに消費されていることも多分にあり、これこそがオーストラリア国内で確実に本セグメントのビールが食い込んでいる1つの要因ともなっています。

ちなみにミッドストレングスの製品をけん引しているのは間違いなく上記のフォーエックスゴールドと、CUBから発売されているグレートノーザン・ブルーイング・スーパークリスプでしょう。
グレートノーザンに至っては2015年に販売が開始されたにも関わらず、2022年にビールシェア1位の座を勝ち取った大人気のブランドで、すでに国内では定番ビールの1つとして定着しています。
さてこのミッドストレングス、味わいについては、どのメーカーもフルストレングスと変わらずフルフレーバードな味わいを実現した宣伝されていますが、実際はかなりさっぱりしたものが多く、オーストラリアの気候も相まってBBQやガブ飲み系として重宝されています。
3.ライト(LIGHT)
ライトは、ミッドストレングスよりさらにアルコール度数が低いタイプで、一般的に2.5%~3%程度です。
アメリカではライトビールというと低アルコールで低カロリーのものを指す場合もありますが、オーストラリアではアルコール度数の低さのみを意味します。
ライトビールはオーストラリアの歴史の中では比較的最近になって成長した新しいジャンルのビールです。
昔はオーストラリアの法律により一定以下のアルコール度数のビールが製造できませんでした。そのため製造ノウハウがなく、登場した当初は美味しいと言えるものは少なかったのです。
現在でも「ライトビールは美味しくない」と言う人がいますが、近年はプレミアム感を出したライトビールも増えています。
ただしここ数年ライトビールの消費量は減少を続けておりメーカーを悩ませる原因にもなっています。
味わいに関して言えば、その名が示すとおり軽い印象を受けるものがほとんどで、酒好きの人、特に男性には物足りないと言われることが多いようです。
一方で、軽い味わいというのは好まれる特徴のひとつでもあり、日中の飲酒や、口当たりのよいさっぱりとしたものを飲みたいと感じるときに多く利用されています。
ライトに関しては、ライトストレングスと表現される事はなく、Light beer(ライトビール)といわれています。また、ライトビールに関しては商品名か、ボトルなどのラベルにLightと表記されるため間違えることは少ないでしょう。
代表的な製品には、クーパーズプレミアムライト(2.9%)、ハーンプレミアムライト(2.2%)などがあります。
セッションビールについて
さて同じくアルコール度数を抑えたビールに「セッションビール」というスタイルが存在しています。
セッションビールは「風味や飲みやすさのバランスを保ちながら、同時にアルコール度数を抑えたクラフトビールに近いもの」となります。
セッション性の詳細については「セッション」のページにて紹介しているので参考にしてください。
4.ノンアルコール(Non-alcoholic)
オーストラリア国内では、ノンアルコールビールは上記3つの分類と同列に語られているわけではなく、完全に「ノンアルコールビール」として確立したジャンルとして取り扱われていいます。
しかしアルコール度数の大まかな分類ということで、ノンアルコールの項目もこちらで紹介することにいたしました。
オーストラリアでは歴史上ノンアルコールビールの生産はほとんど行われてこず、また市場も全くそのような製品を求めていませんでした
しかし多様化が進むにつれ2010年頃からわずかながらに議論が進み、ノンアルコールビールを製造しないメーカーは海外製品を輸入し販売を行右葉になりました。
2010年代後半頃から次第に市場でも受け入れられるようになり、市場規模が年々増加していくことに目を付けた多くのメーカーがこれに参入、2020年から急激に売り上げを伸ばすことになったのです。
現在では多くのブランドでノンアルコールビールを見ることができます。上記、フルストレングス、ミッドストレングス、ライト、とはその並びに隔たりはあるものの、オーストラリアのノンアルコールビールのクオリティを確認するのもまた面白いでしょう。
ノンアルコールビールには日本と同様非常にわかりやすいラベル表示がされており
- Alcohol 0.0%
- Alcohol Free
- Non-Alcohol
などの表記を見ることができます。
ローカーボ(Low Carb)(低炭水化物ビール)
オーストラリアにおけるロー・カーボ(Low Carb)ビール
オーストラリアでローカーボ、いわゆる低炭水化物ビールが注目を集め始めたのは2000年代半ば以降です。当時、糖質やカロリー摂取への関心が社会的に高まり、食品や飲料において「ヘルシー」や「ライト」を志向する消費者が増えていました。その流れを受け、各大手ビールメーカーは従来のフルストレングスラガーに比べて糖質を30〜70%カットした製品を市場に投入。その代表的存在が、カールトン&ユナイテッド ブルワリーズ(現Asahi傘下)が販売する ピュアブロンドです。
ピュアブロンドは2004年に発売され、糖質含有量を極限まで抑えながらも「フルフレーバー」をうたう点で画期的でした。発売当初から「世界初のフルフレーバー低炭水化物ラガー」としてマーケティングされ、オーストラリア全土で爆発的に普及。2000年代後半にはスーパーマーケットやボトルショップの棚で定番商品となり、ビール市場における「健康志向」の先駆け的存在となりました。
こうした背景から、ローカーボ(低炭水化物)ビールはライトビールやノンアルコールでは物足りないが、カロリーや糖質を控えたい層にとって理想的な選択肢として定着しました。特に暑い夏のバーベキューやスポーツ観戦といったオーストラリア特有のライフスタイルと相性が良く、単なる一時的な流行にとどまらず、現在では「ヘルシー志向の定番カテゴリー」として広く根付いています。
日本における低糖質・低カロリービール
日本でも2000年代以降、健康意識の高まりとともに「糖質オフ」「カロリーオフ」製品が大きな市場を築きました。アサヒの「スタイルフリー」やキリンの「淡麗プラチナダブル」などが代表例で、糖質ゼロやプリン体ゼロをうたう商品が相次いで登場。スーパーやコンビニでも手軽に購入できることから、特に中高年層やダイエット志向の消費者に強く支持されています。一方でクラフトビール業界では、低糖質を前面に打ち出す製品はまだ限られており、個性的な味わいと健康志向をどう両立させるかは今後の課題といえます。
情報ソース:
https://en.wikipedia.org/wiki/Beer_in_Australia#:~:text=Market%20characteristics,-Within%20an%20alcoholic&text=Within%20the%20beer%20sector%2C%20premium,remainder%20by%20regional%20or%20microbreweries.
https://brewsnews.com.au/mid-strength-excels-nolo-slows-research/#:~:text=%E2%80%9CThe%20mid%2Dstrength%20beer%20category,Anderson%20said%20in%20the%20paper.
https://www.beerandbrewer.com/how-australia-became-a-leading-market-for-mid-strength-beer/#:~:text=%E2%80%9CAbout%2030%20per%20cent%20of,of%20the%20market%20in%20itself.

