日本ではビールを注文する際に「生大」「生中」「生小」といったサイズ表記が一般的です。
オーストラリアにもこのような定番のグラスが存在しています。しかし日本とは事情が少し異なり、サイズの呼び方や容量が州ごとに変わるという独特の文化が存在します。
「パイント(568mL)」や「スクーナ(425mL)」といったサイズは耳にしたことがあるかもしれませんが、実際に現地を訪れると「ミディー」「ポット」「ジャグ」など多彩な呼び名に出会うでしょう。
さらに、同じ呼び名でも地域によって容量が異なるため、観光客は最初に混乱してしまうことも少なくありません。
この記事では、オーストラリアの代表的なビールグラスのサイズについて、日本のサイズとの比較や州ごとの違い、文化的背景も交えながら詳しくご紹介します。
オーストラリアのビールグラスの基本サイズ
オーストラリアのビールグラスは非常に多彩ですが、現在もっとも一般的なのは以下の4種類です。
- パイント(Pint)=568mL
- スクーナ(Schooner)=425mL
- ミディー/ポット(Middy/Pot)=285mL
- ジャグ(Jug)=およそ1140mL
これらはオーストラリア全土で広く知られているサイズですが、州ごとに呼び方が違ったり、容量が微妙に異なる場合があります。
例えば、ニューサウスウェールズ州で定番の「スクーナ(425mL)」は、ビクトリア州ではあまり一般的ではなく、代わりに「ポット(285mL)」が標準サイズとして出てきます。
また、南オーストラリア州では425mLを「パイント」と呼ぶなど、同じ言葉でも全く違う容量を意味することがあります。
こうした違いは単なるサイズの問題ではなく、オーストラリアに根付くパブ文化そのものを反映しています。
仕事帰りに軽く飲む人はスクーナを好み、しっかり飲みたい人はパイント、複数人でシェアする場合はジャグ、といったように、サイズの違いはライフスタイルや飲み方のスタイルに直結しているのです。

ピッチャーサイズ(ジャグ)
オーストラリアのパブやバーに行くと、最も大きなサイズとして提供されるのが ジャグ(Jug) です。容量はおおよそ1140mL前後で、日本の居酒屋にある「ピッチャー」とほぼ同じ役割を果たします。
ジャグは、友人同士や同僚と数人で集まって飲むときに人気があり、最初から大きなジャグを1つ頼んで、テーブルでグラスに注ぎ分けて楽しむのが一般的です。
スポーツ観戦をしながらジャグを囲む光景はオーストラリアのパブ文化を象徴する場面のひとつであり、特にラグビーやクリケットのシーズンには多くの人がジャグを片手に盛り上がります。
ジャグの容量とバリエーション
ジャグの容量は標準的に1140mLとされていますが、実際には店によって若干の違いがあります。1リットル程度の小さめジャグを提供する店もあれば、1.3リットルを超える大きめのジャグを出す店もあります。
いずれにせよ「大人数で分ける」という用途は共通しており、パイントやスクーナといった個人向けサイズとは明確に役割が分かれています。
日本のピッチャーとの違い
日本の居酒屋で見られるピッチャーは、ジョッキをいくつも頼むよりも「まとめて注文して注ぎ分ける方が安くて便利」という考え方が根付いています。オーストラリアでも考え方は似ていますが、ジャグは単に大きいだけでなく 「みんなで分け合う楽しみ方」 が文化として強調されています。
また、オーストラリアのジャグは縦長でスリムなデザインが多く、取っ手や注ぎ口が工夫されており、ビールがぬるくなりにくいように設計されている点も特徴的です。
ジャグを頼むシーン
ジャグは特に以下のような場面でよく利用されます。
- 友人同士で集まった週末の夜
- スポーツ観戦の大画面テレビがあるパブ
- バーベキューや屋外イベント
- 大人数の飲み会や誕生日パーティー
「まずはジャグを1つ頼んで、足りなくなったら追加する」というのは定番の流れであり、旅行者でも簡単に体験できるオーストラリアならではの飲み方です。
旅行者への注意点
観光客がジャグを注文する際に注意したいのは、「ジャグ=特定の容量ではない」という点です。
同じ「ジャグ」と書かれていても、店によって容量が異なるため「How many millilitres in a jug?(このジャグは何mLですか?)」と確認すると安心です。
また、ジャグを1人で飲み干すのは現地でもあまり一般的ではなく、基本的にはシェア用だと理解しておくと良いでしょう。
パイント(Pint:568mL)
オーストラリアで「大きいビールを1杯」と言えば、まず思い浮かぶのが パイント(Pint) です。容量は568mLで、日本の「生大(633mL)」より少し少なく、「生中(500mL)」よりは少し多いサイズにあたります。
パイントの位置づけ
パイントは飲みごたえがありつつも、ジャグのように「みんなで分ける」ものではなく、あくまで個人で楽しむグラスサイズです。
オーストラリアのパブ文化においては「しっかり飲みたいときの標準サイズ」という位置づけで、多くの常連客が最初の1杯に選ぶのがこのパイントです。
日本の感覚で言うと「中ジョッキ」や「大ジョッキ」に近いのですが、オーストラリア人にとっては「パイント=1杯」という独自の認識があります。
特にシドニーやメルボルンのような都市部では、夕方になるとパイントグラスを手に談笑するビジネスマンや学生の姿が日常的に見られます。
パイントと日本のジョッキ文化の比較
日本では「生中=500mL前後」が一般的で、最もよく頼まれるサイズです。一方、オーストラリアでは「スクーナ=425mL」が中サイズとして人気があり、パイントは「やや大きめ」の位置づけになります。
つまり、日本での「中ジョッキ=定番サイズ」に対して、オーストラリアでは「パイント=がっつり派向け」というニュアンスが強いのです。
また、日本の「大ジョッキ=1000mL近い容量」に慣れている人にとって、オーストラリアのパイント(568mL)は「大と呼ぶには少ない」と感じるかもしれません。逆に言えば、オーストラリアでは「飲みすぎない程度に満足感を得られるサイズ」として合理的に定着しているとも言えます。
南オーストラリア州の例外
オーストラリアのパイント文化で最も注意すべきなのは、南オーストラリア州の特例です。
この地域では425mLのグラスを「パイント」と呼び、568mLは「インペリアルパイント」と区別されています。
観光客が「パイントをください」と注文すると、想定より少ない425mLが出てくることがあり、驚くケースも少なくありません。
逆に「インペリアルパイントをください」と言えば568mLが出てくるため、旅行者にとっては知っておきたいポイントです。
このような違いは植民地時代からの度量衡制度の混乱が残った結果であり、現在もそのまま文化として根付いています。
パイントグラスの形状と特徴
オーストラリアでよく使われるパイントグラスは円筒形で、上部がやや広がったシンプルな形状が主流です。
イギリスでは「ノニックパイント」と呼ばれる、上部が少し膨らんだデザインのグラスが有名ですが、オーストラリアのパブでもこのノニック型を採用しているところが多く見られます。
この形状は持ちやすく、グラス同士を重ねても割れにくいという実用性も兼ね備えています。
パイントを頼むシーン
- 仕事終わりに1杯だけしっかり飲みたいとき
- スポーツ観戦で応援しながら
- バーで友人と語らうとき
- クラフトビールをじっくり味わいたいとき
「今日はとことん飲もう」と思う人が最初からパイントを頼むこともあれば、「軽く1杯だけ」と思っていても結局パイントを選んでしまう人も多いようです。
旅行者へのアドバイス
観光客がパイントを注文する場合、基本的には568mLが出てきますが、南オーストラリア州だけは425mLになる点を覚えておくと安心です。
また、日本の居酒屋感覚で「大ジョッキ」を想像していると、思ったより小さく感じるかもしれません。
とはいえ、現地の人にとってはこの568mLが「しっかり飲む1杯」であり、文化の違いを楽しむのも旅の醍醐味でしょう。

スクーナ(Schooner:425mL)
オーストラリアのビール文化において、最もよく飲まれるサイズのひとつが スクーナ(Schooner) です。容量は425mLで、日本の「生中(500mL)」よりやや少ない程度です。
スクーナの位置づけ
スクーナは「1杯飲むにはちょうどいい」サイズとして人気が高く、特にニューサウスウェールズ州(シドニー周辺)やクイーンズランド州(ブリスベン周辺)では標準的なサイズとされています。
仕事帰りに1〜2杯だけ飲んで帰る人や、食事と一緒に気軽に楽しむ人にとって、スクーナは非常に使い勝手の良いサイズです。
パイント(568mL)に比べると量が少ないため、飲み終わる前にビールがぬるくなる心配が少なく、常に冷たい状態で楽しめるという利点もあります。
このため「味を最後までフレッシュに保ちたい」という人や「いろいろな種類を試したい」というクラフトビール愛好家からも支持されています。
日本の生中との比較
日本の生中は一般的にジョッキで500mL前後ですが、オーストラリアのスクーナは425mLなので若干少なめです。
日本の感覚からすると「中ジョッキより少し小さい」と感じられるかもしれませんが、実際に飲んでみるとほとんど違和感はありません。
また、日本の「中ジョッキ」は店によって容量に差がありますが、スクーナは比較的どこでも425mLに統一されている点が安心です。
州ごとの扱いの違い
- ニューサウスウェールズ州(シドニーなど)
→ スクーナは「定番中の定番」。観光客がパブで「ビールを1杯ください」と注文すると、店員から「スクーナでいい?」と聞かれることが多いです。 - クイーンズランド州(ブリスベンなど)
→ ニューサウスウェールズ州と同様に人気があり、定番サイズ。 - 南オーストラリア州(アデレードなど)
→ ここでは285mLのグラスを「スクーナ」と呼ぶため注意が必要。425mLは「パイント」と呼ばれるため、旅行者にとっては混乱の原因になりがちです。 - ビクトリア州(メルボルンなど)
→ スクーナはあまり一般的ではなく、代わりに「ポット(285mL)」が広く使われています。 - 西オーストラリア州(パースなど)
→ こちらもスクーナより「ミディー(285mL)」が中心。
このように、同じ「スクーナ」という言葉でも州によって容量が異なることがあり、観光客が戸惑う場面が多々あります。旅行中に確実に希望のサイズを得たい場合は、「How many millilitres is a schooner here?(スクーナはここでは何mLですか?)」と確認するのもよいでしょう。
スクーナを頼むシーン
- 平日の仕事帰りに「軽く1杯」
- 食事と一緒にちょうどいいサイズで楽しむ
- クラフトビールを2種類以上飲み比べたいとき
- パイントではやや多いと感じる人の選択肢
スクーナはオーストラリアのパブ文化を象徴するサイズであり、旅行者が最初に体験するのにもぴったりです。
小さいサイズのグラス(ミディー、ポット、ハーフパイントなど)
オーストラリアのパブでは、285mL前後の小さなサイズのグラスも一般的です。
このサイズは日本の「生小(約300mL)」に近く、観光客が「思ったより小さい」と感じることもありますが、地元では軽く1杯だけ飲みたいときや、複数の銘柄を飲み比べたいときによく選ばれます。
呼び方の違い
同じ285mL前後でも州ごとに呼び名が異なります。
- ミディー(Middy):ニューサウスウェールズ州や西オーストラリア州で一般的。
- ポット(Pot):ビクトリア州、クイーンズランド州、タスマニア州で広く使われる呼称。
- ハーフパイント(Half Pint):首都特別地域(ACT)などで使われる表現。
- テン(Ten):クイーンズランド州、タスマニア州で聞かれることがある呼び名。
- ハンドル(Handle):ノーザンテリトリーで、持ち手付きのグラスを指す呼称。
このように、同じ容量でも州ごとに呼び方が変わるため、旅行者が混乱しやすい部分でもあります。
ハーフパイント(Half Pint)について
「ハーフパイント」は特に観光客にとってわかりやすい呼び方です。名前の通り「1パイントの半分」であり、容量はUK式のパイント(568mL)の半分にあたる 約284mL です。
ただし注意点として、オーストラリアの一部地域では「パイント=425mL」とされるため、その半分は210〜215mL程度になってしまうケースがあります。
このように「ハーフパイント」といっても、州によって実際の容量が異なる場合があるのです。
また、ハーフパイントは「量を控えめにしたいけれども、パイントの文化を体験したい」という人に向いています。
例えば「クラフトビールを試してみたいが、いきなりパイントを飲み切るのはきつい」という時にはちょうど良い選択肢になります。
日本人観光客にとっても、パイントとの比較がしやすく、感覚的に理解しやすいサイズと言えるでしょう。
利用シーン
- ランチタイムなど、軽く1杯だけ飲みたいとき
- 複数の種類を試飲したいとき
- アルコールに弱い人や、車の運転を控えている人が「量を減らして楽しむ」ために注文するケース
小さいサイズは一見すると「物足りない」と思われがちですが、飲むスピードや体調に合わせて柔軟に選べる点が利点です。
パブでのオーダー方法
オーストラリアのパブやバーでは、日本の居酒屋のように店員がテーブルまで注文を取りに来るスタイルではなく、基本的に カウンターに行って自分で注文するセルフ方式 が主流です。
注文はシンプルで、欲しいビールの名前とサイズを伝えるだけです。英語に自信がなくても「ビール名+サイズ+please」でほとんど通じます。
注文例
- Can I have a schooner of VB, please?
(VBをスクーナでお願いします) - Can I have a pint of XXXX Gold, please?
(フォーエックスゴールドをパイントでお願いします) - Can I have a jug of Carlton Draught, please?
(カールトンドラフトをジャグでお願いします)
瓶ビールを頼む場合は、サイズ指定をせずに「Can I have a bottle of VB, please?」のように注文します。
注意点
- 州ごとの違いに注意
先に説明したとおり、同じ「パイント」や「スクーナ」でも州によって容量が異なる場合があります。観光客が安心して注文したい場合は「How many millilitres is a schooner here?(スクーナはここでは何mLですか?)」と聞くのも良いでしょう。 - 支払い方法
オーストラリアのパブでは現金だけでなくカード決済(特にタッチ決済)が非常に一般的です。カウンターで支払いを済ませ、すぐにビールを受け取るスタイルが多いです。 - チップの習慣
オーストラリアでは基本的にチップは不要ですが、特別に良いサービスを受けた場合やレストラン形式のお店ではチップを渡すこともあります。ただしパブのカウンター注文では基本的に不要です。
旅行者向けのアドバイス
初めての人は「サイズ表記がわかりにくい」と感じるかもしれません。そんなときは、メニューに表記されているサイズを指差して「This one, please」と言うだけでも問題ありません。
また、クラフトビールを扱う店では「テイスター(Taster)」と呼ばれる小さな試飲サイズを用意していることもあり、少量で味を確認してから好みのサイズを注文するのもおすすめです。
各州ごとのビールグラスの呼び方と容量 一覧
オーストラリアは国土が広く、州ごとに文化や慣習が異なります。ビールグラスのサイズについても例外ではなく、同じ呼び名でも州によって容量が異なるという厄介な特徴があります。これは観光客にとって最も混乱しやすいポイントのひとつです。
以下では、州・地域ごとの代表的なサイズとその特徴を紹介します。
ビクトリア州(メルボルンなど)
- Pony(ポニー):140mL
- Small glass:170mL
- Glass:200mL
- Pot(ポット):285mL(標準サイズ)
- Schooner(スクーナ):425mL
- Pint(パイント):570mL
ビクトリア州では「ポット(285mL)」が日常的に最もよく注文されます。スクーナやパイントも存在しますが、観光客が「生中サイズ」をイメージして頼むと、出てくるのは285mLのポットというケースも多くあります。
南オーストラリア州(アデレードなど)
- Pony:140mL
- Butcher:200mL
- Schooner:285mL
- Pint:425mL
- Imperial Pint:570mL
南オーストラリア州は特に注意が必要です。425mLを「パイント」と呼び、568mLは「インペリアルパイント」と区別されます。旅行者が「パイントをください」と言うと、思ったより小さなグラスが出てきて戸惑うことがあります。
西オーストラリア州(パースなど)
- Shetland:115mL
- Pony:140mL
- Bobbie or Six (fl oz):170mL
- Glass:200mL
- Middy or Half Pint:285mL
- Schooner:425mL
- Pint:570mL
西オーストラリア州では「ミディー(285mL)」が一般的です。さらに115mLや140mLといった極小サイズも残っており、歴史的にさまざまなサイズが使われてきたことを物語っています。
ノーザンテリトリー(ダーウィンなど)
- Seven:200mL
- Handle:285mL(持ち手付き)
- Schooner:425mL
- Pint:570mL
暑さの厳しい地域らしく、冷えた状態でビールを飲み切れる285mLの「ハンドル」がよく使われます。200mLの「セブン」も健在で、小サイズ文化が残っています。
クイーンズランド州(ブリスベンなど)
- Pony:140mL
- Seven:200mL
- Pot:285mL(一般的)
- Schooner:425mL
- Pint:570mL
クイーンズランド州では「ポット(285mL)」が最も標準的で、特にローカルパブではこの呼び方を知っておくと安心です。スクーナやパイントもありますが、観光客は呼称の違いに最も戸惑いやすい州とも言えます。
ニューサウスウェールズ州/キャンベラ(シドニーなど)
- Pony:140mL
- Seven:200mL
- Middy or Half Pint:285mL
- Schmiddy:350mL
- Schooner:425mL(定番)
- Pint:570mL
ニューサウスウェールズ州では「スクーナ(425mL)」が圧倒的に人気です。さらに350mLの「シュミディー」という独自サイズも存在します。観光客がまず耳にするのもこの州の文化でしょう。
タスマニア州(ホバートなど)
- Small beer:115mL
- Six (fl oz):170mL
- Seven:200mL
- Pot:285mL
- Fifteen (fl oz) / Schooner:425mL
- Pint:570mL
タスマニア州は古い呼称が多く残っており、歴史的な雰囲気を感じさせます。特に「Six(6オンス)」や「Fifteen(15オンス)」といった呼び方は、今ではほとんどの州で姿を消したものです。
旅行者へのアドバイス
同じ「パイント」や「スクーナ」でも容量が違うため、初めて訪れる州では「このサイズは何mL?」と確認するのが無難です。
また、州をまたいで旅行する際は、同じ言葉でも違うサイズが出てくる可能性があることを理解しておくと混乱を防げます。
その他のサイズ(シュミディー、セブンなど)
ここまで紹介してきたパイント・スクーナ・ミディー/ポットの3種類が、現在オーストラリアで一般的に見られるサイズです。
しかし一部の州や特定の地域では、これ以外のグラスサイズも存在します。旅行者にとっては馴染みが薄い呼び方ですが、知っておくと現地で「何それ?」と驚かなくて済みます。
シュミディー(Schmiddy)
容量は 350mL。ニューサウスウェールズ州にしか存在しないローカルなサイズです。
中ジョッキ(500mL)より少なめ、スクーナ(425mL)よりさらに少なめという中途半端な位置にあります。
そのため日常的に頼まれることは少なく、特定のパブや地域でのみ見られるサイズです。観光客にとっては「現地ならではのレアサイズ」として体験するのも面白いでしょう。
セブン(Seven)
容量は 200mL。名前の由来は「7オンス(7oz)」からきています。
クイーンズランド州やノーザンテリトリーなど、いくつかの地域で今も残っています。
かなり小さいため、軽く一口二口だけ楽しみたい人や、アルコールを控えたい人に選ばれます。旅行者からすると「ビールの試飲サイズ」に近い感覚かもしれません。
かつて存在した極小サイズ
歴史的には 115mL(4oz), 140mL(5oz), 170mL(6oz) といった、さらに小さいサイズも存在しました。
現在はほとんどの州で姿を消しましたが、古い資料や古参の常連客との会話の中に登場することがあります。これらのサイズは、ビールが高価だった時代や、酒量を抑えたい人々に需要があったと考えられます。
旅行者へのポイント
こうした特殊サイズは、観光地の中心部ではあまり見かけませんが、地方都市や古いパブに入るとメニューに残っていることがあります。
その場合、スタッフに「How big is a Schmiddy?(シュミディーってどのくらいの大きさですか?)」と尋ねると丁寧に教えてもらえます。
また、クラフトビールバーではこうしたサイズが「テイスティング用」として活用されることもあり、ローカル文化と現代的なビール体験が融合している例と言えるでしょう。
bloke ビール(?)
日本にある「アウトバック・ステーキハウス」というレストランをご存じでしょうか。オーストラリアをテーマにしたステーキハウスとして知られていますが、実はこのチェーンはアメリカ・フロリダ州で誕生したものです。
そのアウトバック・ステーキハウスでは、750mLサイズの大きなビールグラスが提供されており、これを 「Bloke(ブローク)」 と呼んでいます。
「Bloke」という名前を聞くと、「オーストラリアにはこういうサイズがあるのか」と思ってしまう方も多いのではないでしょうか。実際にインターネット上でも「オーストラリアではBlokeというグラスサイズがある」と誤解している情報を見かけます。
しかし結論から言えば、オーストラリアに「Bloke」という正式なビールサイズは存在しません。これは完全にアウトバック・ステーキハウス独自の呼び方であり、現地のパブやバーで「Blokeください」と注文しても通じません。
「bloke」という単語の意味
「bloke(ブローク)」という単語自体は、イギリスやオーストラリアで日常的に使われる俗語で、「男」「男性」という意味を持ちます。
ニュアンスとしてはアメリカ英語の「guy」に近く、カジュアルな表現です。
近年のオーストラリアではやや古い言葉とされ、若い世代はあまり使わなくなっていますが、「top bloke(トップブローク)」というフレーズは今でもよく使われています。
例えば「He is a top bloke.」と言えば「彼は最高にいいやつだ」という意味になります。旅行者が会話の中で耳にすることもあるでしょう。
旅行者が誤解しやすい理由
アウトバック・ステーキハウスが日本でも展開しているため、「オーストラリアの公式なサイズ」だと誤解されがちです。
実際にSNSなどでも「オーストラリアでBlokeサイズを飲んだ」という書き込みが見られることがありますが、それはチェーン独自の呼称であり、現地の文化とは異なります。
オーストラリア本場のパブで750mLサイズを注文したい場合は、「パイントグラス2杯分」として頼む必要があります。
「Can I have two pints, please?」と注文すれば、おおよそBlokeに相当する量を楽しめます。
まとめ
- Bloke=オーストラリアに存在するサイズではない
- アウトバック・ステーキハウス独自の呼称
- 本来の意味は「男性」を表す俗語
- パブで通用しないため注意
まとめ
オーストラリアのビールグラスのサイズは一見シンプルに見えますが、州ごとの文化や歴史が反映されており、実際には非常にバリエーションが豊富です。
基本的には以下のサイズを覚えておけば、現地で困ることはほとんどありません。
- パイント(Pint:568mL)
- スクーナ(Schooner:425mL)
- ミディー/ポット(Middy/Pot:285mL)
- ジャグ(Jug:約1140mL)
ただし注意すべき点は、州ごとに呼び方や容量が変わることです。特に有名なのは南オーストラリア州の「パイント=425mL」で、他州の基準(568mL)とは異なります。旅行中に同じ言葉を使っても違うサイズが出てくる可能性があるため、注文前に容量を確認すると安心です。
また、日本の居酒屋でおなじみの「生中=500mL」と比べると、オーストラリアでは「スクーナ=425mL」がやや少なめの標準サイズとして浸透しています。そのため「中ジョッキ感覚」で注文すると、少し物足りなく感じるかもしれません。一方で「パイント=568mL」は日本の生大に近く、飲みごたえを求める人には最適です。
観光客にとっては「パイント」と「スクーナ」の違いを押さえておくことが最も重要です。さらに複数の銘柄を試したい場合には、ミディーやハーフパイントを選ぶのも良いでしょう。
最後に、「Blokeビール」という呼び方について補足します。これはオーストラリア本場のサイズではなく、日本のアウトバック・ステーキハウスなど一部チェーン独自の名称です。現地で注文しても通じませんのでご注意ください。