NTドラフト(エヌ・ティー・ドラフト)(NT Draught)

NTドラフト
資料提供 CC BY-SA 2.5, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=6286962
  • 1958年、カールトン&ユナイテッドブルワリーズ(CUB)により建てられたダーウィン地区初の醸造所、ダーウィンブルワリーにて製造が始まったビール
  • ダーウィン・スタビーというオーストラリア国内でも大変珍しい瓶にて販売されていた
  • 2015年大変惜しまれながらCUBにより販売中止が決定、今でも伝説として語られる
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基本情報

名称NTドラフト(エヌ・ティー・ドラフト)(NT Draught)
産地ノーザンテリトリー(北部準州)
ビアスタイルラガー
アルコール度数4.9%
IBUNo Data
EBC (SRM)No Data
タイプフルストレングス
醸造所カールトン&ユナイテッドブルワリーズ
Carlton & United Breweries (CUB)(通称「CUB」)

NTドラフト(エヌ・ティー・ドラフト)概要説明

1951年にカールトンアンドユナイテッドブルワリーズ(CUB)がノーザンテリトリー(北部準州)での醸造に進出するために子会社、N.T. ブルワリー(N.T. Brewery Pty.Ltd.)を設立、その後ダーウィン地区に初めてのダーウィンブルワリー(Darwin Brewery)を立ち上げた。
NTドラフトはそのダーウィンブルワリーにて1958年4月に販売が開始され、2015年の5月に同CUBにより生産中止が発表された後、ひっそりとこの世から姿を消していった。
ちなみにN.T.ブルワリーや、NTドラフトの「NT」はノーザンテリトリー(Northern Territory)の頭文字を指す。

オーストラリアビールの基本情報のページ内、「各ビールブランドは地域との結びつきが非常に強い各ビールブランドは地域との結びつきが非常に強い 日本にはない特色だ」の項目で紹介している通り、オーストラリアのビール銘柄は各地域での結びつきが大変強い。本銘柄もまた例外ではなく販売はノーザンテリトリーのみであったし、また同州内では大変人気があった。また本製品は地域の人々のみならずオーストラリア国内、はたまた世界中から大きく注目された理由の一つにそのボトル形状があげられる。

ダーウィンスタビー(Darwin Stubby)

ダーウィンスタビー
資料提供 CC BY-SA 2.5, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=6286962

上の写真の通り、NTドラフトは2リットルを超える大変大きな瓶で販売されこの瓶形状は特別にダーウィンスタビーと呼ばれた*。
*ビール瓶の種類「スタビー」等その他についてはビール瓶のページを参照ください
ダーウィンスタビーにはいくつか種類があり、1.125リットル、2リットル、2.25リットル、2.27リットルが存在したが主に利用されたのは2.27リットルだ。
ダーウィンスタビーが登場した背景は瓶詰めに伴うコスト削減と、ノーザン・テリトリーの大きな喉の渇きに応えること、つまり大容量で満足してもらおうという発案だった。
元々、ダーウィンブルワリーはCUBの定番品であるカールトン・ドラフトの醸造を行っておりドラフトビールとして地域のパブやホテルに卸していたがこの醸造所には瓶詰工場が併設されていなかった。そのためビール瓶は依然としてメルボルンから輸送する必要があったのだ。ボトルを長距離輸送する物流上の問題より瓶サイズを大きなものへ変更し、それがいつしかNTドラフトにも利用されるようになり、このダーウィンスタビーはノーザンテリトリーに根付いていった。
ダーウィンスタビーはビール瓶そのものが観光名所とされるほど人気となりオーストラリア国内外からのビールファンを集める結果となった。

NTドラフト生産中止

NTドラフトは生産拠点を幾度か移しながらもなんとか生産を続けていた。しかし2015年、CUBはコスト上昇や需要の減少により生産中止を発表。このニュースはノーザンテリトリー人々を大変落胆させた。アリススプリングス*では、住民たちがダーウィンスタビーの通夜を営み、最後のボトルはオーストラリア産のラクダの足をじっくり煮込んだ料理とともに飲まれた。地元のニュースは、「ノーザンテリトリーの人々は、57歳という早すぎる生涯を閉じた2リットルのロングネックが間もなく失われることに動揺している。」と報じた。
CUBは遺産ビールとし、不定期にNTドラフトの販売を行う可能性があるとアナウンスしている。
*アリススプリング:ノーザンテリトリーにある人口2番目の都市。オーストラリア大陸のほぼど真ん中にあり、エアーズロックを訪れる際の拠点となる

NTドラフト(エヌ・ティー・ドラフト)の味わい

NTドラフトは観光客向けのギミックと評されることもあり、味わいに関しては大したことないと評されることがしばしばあった。確かにノーザンテリトリーの気候にあうようライトで軽い飲み口であることが特徴であり、コク深いビールを期待しているものにとっては物足りないのかもしれない。しかし、ノーザンテリトリーの熱い気候にあるようにぐっと冷やしてノド越しでガンガン胃袋に流し込めば、名物のダーウィンスタビーも手伝って大変なるリフレッシュと満足な時間が過ごせる、そんな製品だ。とにかくビールが重いのだ。まるで手首が折れそうになる。そんな楽しさが忘れられないひと時の演出に一役買う。

味わいはやはりシンプルだがクリーンで非常に澄んだ味わいが特徴。ほのかな蜂蜜の甘みとプレーンな穀物感、しかし嫌な後味やケミカル感はなくドライフィニッシュ。ともすれば薄いといわれるがしっかりと澄んだ味わいに嫌味がないためしっかりと受け入れられていた。

今や歴史として語られるビール、大変惜しい銘柄をなくしたものだ。是非ともCUBさんには復活を願いたいものである。

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