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トゥースアンドコーリミテッド (Tooth and Co. Limited)(ケントブルワリー(KENT Brewery))

1930年代のトゥースアンドコーリミテッド、ケントブルワリー
資料提供 https://archives.cityofsydney.nsw.gov.au/nodes/view/571235
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トゥースアンドコーリミテッド概要

トゥースアンドコーリミテッドはオーストラリア、ニューサウスウェールズ州(NSW)のシドニー中心地に程近い場所に本拠地をおき、ケントブルワリー(Kent Brewery)を長きにわたり運営してきた企業。
1835年にジョン・トゥース(John Tooth)と義理の弟、ジョン・ニューナム(John Newnham)によって創業が開始された(オーストラリアとしては)歴史のあるブルワリーでニューサウスウェールズ州では主要な役割、地位を占めた。
(ブルワリーは歴史的にもかなり貴重な存在のため、オーストラリア国内で有名な場所となっている。)

トゥース一族は醸造のみならず農業や不動産業、バンキングに至るまで幅広い企業活動を行っていたため、景気の変動により幾度となく訪れた経済の危機においても全く動じることなくビール醸造の運営を続けることができた。そのため、20世紀となってからは圧倒的な地位を築くほどのメーカーへとのし上がった。

しかしながら迫り来る時代の流れにはとうとう勝てず1981年、当時アデレード蒸気船会社の一部門であり、企業買収や資産剥奪を行ったアドスチーム(AdSteam)として知られるデビッド・ジョーンズ(プロパティ)Pty Ltdに企業すべてを買収されてしまった。
その後ケントブルワリーは1983年に現在のカールトン&ユナイテッドブルワリーズ(CUB)によって買い取られ醸造所としての運営を続けていった*。

*正しくは当時CUBを保有していた親会社のIndustrial Equity Limited(インダストリアル エクイティー リミテッド)、通称 IEL(アイ イー エル)である。詳細はCUBのページ内、歴史についての説明を参照ください。

ケントブルワリーは数多くのビールをケントブランドの名のもと製造販売していた。CUBは醸造所の買収後もケントブランドのビール製造を続けていたのだが次第にその数が減っていった。かわりにCUBの主要商品であるヴィクトリアビターや、フォスターズラガーなどの主要商品の醸造の一部を同ブルワリーで開始したのであった。ケントの名を冠するビールはとても素晴らしい出来栄えだったため多くの人々から惜しまれていた。
その後もケントブランドの商品は数を減らし続け、現在市場に出回るもので「ケント」の面影を残すものはたった2つとなってしまった。
1つは「KBラガー」という商品。
もうひとつは「レシャスラガー(Resch’s Lager)*」である。
*現在もCUBにて醸造されるレシャスピルスナーの兄弟製品

レシャスラガーは元々レシャスリミテッド ウェーバリーブルワリー(Resch’s Ltd Waverley Brewery)*にて製造されていたが、同ブルワリーはケントブルワリーにて買収され、その後「レシャス」ブランドの名のもと製造が続けられていた。
*レシャスリミテッドという会社が持っていたウェーバーブルワリーと名づけられた醸造所の意味

1991年、ケントブルワリー
1991年、シドニーブロードウェイ周辺 ケントブルワリー
https://archives.cityofsydney.nsw.gov.au/nodes/view/601039
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レシャスブルワリー補足

レシャスウェーバリーブルワリーは1879年別の場所で醸造所を運営していたエドマンド・レッシュ(Edmund Resch)という人物により立ち上げられたレシャスリミテッド(Resch’s Ltd)が保有した醸造所である。通称として単に「レシャスブルワリー」と呼ばれることが多かった。

立ち上がりはシドニーのボンダイジャンクションとよばれる場所にすでに存在していた醸造会社、ウェーバリーブルワリーをエドマンドが買いとり創業開始した。その後は同じくシドニーのレッドファーンという場所に新たにビール工場を立ち上げ本社機能もそちらへ移転、運営を続けていた。 レシャスの作るビールはものすごくクリアでピュアな味を持っておりニューサウスウェールズ州内では絶大な支持を獲得していた。特にレシャスピルスナーは一部熱狂的なファンもいるほどの出来栄だった。
詳細はレシャスリミテッドのページを参考に

ケントブルワリーその後

ケントブルワリーはその後CUBの主要製品を製造し同社を支え続けていたが、残念ながら2005年にはこのブルワリーも完全閉鎖されてしまいシドニーのほぼ中心地に位置するアイコン的な醸造所でのビール製造に幕が下ろされてしまった。多くのひとたちが残念に思ったが時代の流れと諦めた。

巨大なアンテナが目印のこのケントブルワリー、全く人気のないまま2年の月日が過ぎた2007年、シンガポールの多国籍企業で世界各地で主に不動産の開発、所有、管理を行っている企業、フレイザーズ・プロパティー(Frasers Property)によって2億800万豪ドル*で買収されることとなった。
*当時のレートで日本円2800億円ほど

ワン・セントラル・パーク
ワン・セントラル・パーク
https://en.wikipedia.org/wiki/One_Central_Park#/media/File:One_Central_Park_Sydney_3.jpg
資料提供 CC BY-SA 4.0

シドニー セントラルパーク

この地はシドニーの最も中心的な駅である「セントラル駅」からすぐそばに位置するため、この地を新たに「セントラルパーク(Central Park)」と名付け一大商業施設とマンション建設のプロジェクトが2010年2月から始まった。

垂直庭園や太陽追尾ミラーシステムなど、環境に配慮したデザインが特徴のワン・セントラル・パーク(One Central Park)と名付けられた、2つの高層タワー(イーストタワー(East Tower)とウエストタワー(West Tower))で構成される複合施設が2013年から順にオープン。
これらタワーの1階~3階ににあるショッピングセンターはさらにセントラル・パーク・モール(Central Park Mall)と名付けられ、オープン。地元はもとより、観光客にも人気が高い。
ケントブルワリー当時は少し暗めのイメージで鬱蒼とした場所が大変きらびやかな場所へと生まれ変わった。

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