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ストーンアンドウッドブルーイングカンパニー

ストーンアンドウッドブルーイングカンパニー
Sited from https://matildabay.com/
  • 2008年、ニューサウスウェールズ州のバイロンベイで創業のクラフトブルワリー。
  • フラグシップ製品、パシフィックエールの爆発的人気によりオーストラリアでトップレベルのクラフトブルワリーへと登りつめた
  • 2021年にキリンホールディングズによって買収、保有された
目次

ストーンアンドウッドブルーイングカンパニー(Stone & Wood Brewing Co.)概要

ストーンアンドウッドブルーイングカンパニーのビール
ストーンアンドウッドブルーイングカンパニーのビール
Sited from https://stoneandwood.com.au/

ストーンアンドウッドブルーイングカンパニー(Stone & Wood Brewing Co.)(以下「ストーン&ウッド」と表記)は2008年、ニューサウスウェールズ州のバイロンベイ(Byron Bay)という小さな街にて、3名の創業者、ロス・ジュリシッチ、ブラッド・ロジャース、ジェイミー・クックによって創業されたブルワリー。3名は元々、オーストラリアのビールシェアナンバーワンの巨大飲料メーカー、カールトン&ユナイテッドブルワリーズ(CUB)の社員であったが本ブルワリー立上げのためにCUBを退職、このかわいくて小さな街、バイロンベイの工業団地エリアにて古い清涼飲料工場を購入ののち、醸造所へと改造したのだった。

オーストラリア国内には数多くの有名なクラフトブルワリーが存在するが、このストーン&ウッドは国内ビールファンでは誰もが知る近年まれにみる急成長をみせ、驚異的な成功をおさめたブルワリーと言えよう。
創業当初はわずか2,500リットルの生産能力での開始となったがわずか10年の間に生産量は1,200万リットルを突破、このストーン&ウッドの人気を決定づけたのは同ブルワリーの代名詞ともなっている爆発的人気を獲得した「パシフィックエール」である。驚くほどトロピカルで華やかなパシフィックエールはクラフトビール界をさらに盛り上げ、新たなファンも獲得、(オーストラリア)国内で一気にそのブランド、ブルワリーの名を知らしめた。
この「パシフィックエール」はビール製品の名前という枠を超え、2024年現在、オーストラリアでは1つのビアスタイルとして根付き*、本ブルワリーのみならず多くのブルワリーから同じスタイル名の製品が登場している。
パシフィックエールの人気はとどまるところを知らず2020年には単品での販売が1500万リットルを超えるほどの成長ぶりをみせた。
*ビアスタイルとしてのパシフィックエールについては「ビールの種類(スタイル)」ページ内の「パシフィックエール(Pacific Ale)」の項目を参照ください

クラフトブルワリーがオーストラリアでも、やっと、広く受け入れられるようになったのは2010年代になってからだろうか。それよりも前に創業した本ブルワリーにおいて、創業者たちはバイロンベイの地元をとても大切にしていた。地域の肉屋やパン屋が地元に愛されるように彼らも地元の人々に新鮮で最高においしいビールを届けたい、そのような思いから2008年当時、ドラフト・エールと名付けられた現在のパシフィックエールをまずは樽生のみの提供として地元を中心としたパブや飲食店に販売を開始した。
クイーンズランド州のゴールドコーストからほど近いこの地域、サーファーや若者を中心として栄えたが、現在は富裕層からも大変人気が高くあらゆる層の人々が住む街となった。そんな街でこのドラフト・エールは瞬く間に人気を獲得、在庫が全く足りないという状況になったのだ。
2010年にはこのドラフト・エールをパシフィック・エールへと名称変更、それに伴い瓶ビールとして一般にも販売を開始。そこからこのブルワリーの成功物語はとどまるところを知らなかった。

2014年には第二の醸造所、マーウィランバー(Murwillumbah*)ブルワリーが同じくニューサウスウェールズ州内、バイロンベイから北へ約25kmのところに建てられた。現在ではこの場所がストーン&ウッドの主要な醸造所として利用されている。2019年、にはクイーンズランド州ブリスベン、フォーティテュード・バレー(Fortitude Valley)と呼ばれる場所に新たに醸造所を立ち上げ、現在は3か所の醸造所で営業を続けている。
*日本と同様なんでも省略するのが好きなオーストラリア。マーウィランバー(Murwillumbah*)は、マーバ(Murbah)と略させて表記、発音されることが少なくない。

ストーン&ウッド、Lionへの売却

ストーン&ウッドの創業者たちは同ブルワリーの立上げと同時にファーメンタム*(Fermentum Pty Ltd)というホールディングカンパニーを設立していた。そして、トーン&ウッドはファーメンタムに保有される子会社として経営を続けていた。ファーメンタムそのものはストーン&ウッド以外にも他ブルワリー(及びそれらビールブランド)を買収による保有や、ビール以外のアルコール飲食事業や飲食店等を展開していた。ビールブランドで言えば2021年9月の時点でメイン事業であるストーン&ウッドのほかに、トゥーバーズ(Two Birds)*、フィクセーション(Fixation)と呼ばれるものを保有していた。
*オーストラリア初の女性創業者による醸造所としても有名ユニークなビールに評価が高い

ライオンによるストーンアンドウッド買収のニュース
ライオンによるストーンアンドウッド買収のニュース
https://www.lionco.com/2021/09/09/fermentum-group-creators-of-stone-wood-to-become-part-of-lion/

これらファーメンタムが保有するすべての事業(ファーメンタムグループと呼ばれている)は2021年9月、オーストラビールシェアNo2、超巨大アルコールメーカーであるライオン(Lion)により買収されることとなった(結果、ライオンのオーナー会社であるキリンホールディングスによって保有される形となっている)。

このニュースにビールファンは「またか」とややうんざりし、大変落胆していた。実はこのストーン&ウッドと同様に、超有名なクラフトブルワリーへと急成長を果たしたバルター(Balter)は2019年にオーストラリアビールシェアNo1の最大手アルコール飲料メーカー、カールトンアンドユナイテッドブルワリーズ(Carlton & United Breweries)(CUB)にて買収された。これと同様の事がまた起きたというだけではなく、この2大トップ企業は、2010年頃から事あるごとに有名なクラフトブルワリーを買収による吸収合併繰り返し自分たちのものへとしてきたのだ。
クラフトブルワリーはどちらかというと、創業者たちの熱い思いにより、利益を多少犠牲にしてでも自分たちの信念を貫いた製品を打ち出すところが多かった。いや、多いのだ。それが大手メーカーに吸収されたとたんにそういう思いは押さえつけられ、利益追求へと方針を変えてしまうことが少なくない。多くのビールファンもファーメンタムのライオンへの買収によりそれと同じことが起きないかと心配したのだ。

ファーメンタム(ストーン&ウッド)の創業者たちの意見はこうだ。
ファーメンタム(ストーン&ウッド)の創業者たちにとって、会社がここまで大きくなってしまうと企業を守ってくれるもの(custodian)が絶対に必要だと感じていた。それにより彼らが築いてきた遺産、従業員、文化、ブランドを守りながら安心して事業を成長させることに注力できると考えたためだ。しかしそれはストーン&ウッドのフィロソフィー(地域社会への貢献。徹底したサステナビリティへの取り組み。)に理解を示してくれるところでなければだめだった。ライオンは彼らの考え方に対し熱意をもって歓迎しただけでなく、今後もストーン&ウッドは独立した形で経営を続けていけることを約束した。こうして創業者たちは安心してライオンの一員に加わったのだ。
この買収がどのような結末を迎えるのかは継続的に確認を続けたい。

1つ付け加えるとするならば2023年の6月にストーン&ウッドが保有するビールブランド、トゥーバーズ(Two Birds)は廃止され、タップハウス(ブルワリーに併設される出来立てビールが飲めるレストラン)などもすべて閉鎖された。トゥーバーズに従事していた従業員はライオン内で空きポジションがなければ解雇となると発表された。
これがライオンの裏切りではなく、ストーン&ウッドの創業者達も納得した結果だった事を信じたい。

ストーン&ウッドのビール製品

ストーンアンドウッドブルーイングカンパニーのビール
ストーンアンドウッドブルーイングカンパニーのビール
Sited from https://stoneandwood.com.au/

2024年現在、ストーン&ウッドのビールラインナップは主に3つのカテゴリーに分かれる。まずは定番品と言われる「コア・レンジ」、そして限定品や、シーズンものとなる「リミテッド・リリース」最後は同社の醸造職人によって手掛けられる挑戦的なビールを少量生産で販売する「カウンターカルチャー」だ。リミテッド・リリースよりもカウンターカルチャーは製品の回転が早く時々ぶっ飛んだ製品が見られるのも面白い。
ここでは2024年現在のコア・レンジのみを簡単に紹介し、本ページの結びとしよう。

パシフィックエール(PACIFIG ALE) (アルコール度数:4.4% )

ストーン&ウッドの看板商品。オーストラリア国内でも大変に認知度が高くもはやだれもが知る逸品となった。

クラウディーペールエール(CLOUDY PALE ALE) (アルコール度数:5.0% )

濁ったタイプのペールエール。パシフィックエールがバランス重視だがこちらはよりストロングな味わいを持つ。

グリーン・コースト・クリスプ(GREEN COAST CRISP) (アルコール度数:3.5% )

オーストラリア国内では大変人気のミッドストレングスのラガースタイル。素材にこだわり軽い飲み口を実現。

グリーン・コースト・ラガー(GREEN COAST LAGER) (アルコール度数:4.7%)

高級モルト・ホップを使用した無濾過のフルボディーラガー。

ヒンターランド・ヘイジー・ペールエール(HINTERLAND HAZY PALE ALE) (アルコール度数:5.2%)

オーストラリア産の麦芽とホップで仕上げたモダンオーストラリアンスタイルのペールエール

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