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ビールの種類(スタイル)

ビールのスタイル
目次

ビールの種類

ビールの種類(ビアスタイル)は細かい所まで掘り下げれば非常に多く存在し、その数は少なくとも150と言われる。それら詳細は専門書籍や該当のウェブサイトを参照していただくとして、ここでは主にオーストラリアで飲まれているビールの分類に絞って紹介していく。

その前にまずはビールの分類方法について簡単に紹介したい。
まずビールは醸造方法が三つ存在している。上面発酵(Top fermented)の「エール」と下面発酵(Bottom fermented)の「ラガー」、そして自然発酵である。現在自然発酵のビールは非常に少なく私たちが普段飲むビールはほぼすべてこの上面発酵か下面発酵のものとなる。

そして上面発酵、下面発酵それぞれに多くの種類のビールが存在するのだがそれらは「スタイル」と呼ばれている。*ビアスタイルとも呼ばれる。
普段日本人の多くの方が飲まれているビール、「キリンラガー」や「アサヒスーパードライ」、これらは下面発酵のピルスナーというスタイルに分類される。

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醸造方法特徴スタイル製品
上面発酵歴史上古い醸造方法。麦汁の表面に酵母が浮かび上がる。醸造温度は高めの20℃前後。
「ラガー」と呼ばれる。
エール、ペールエール、IPA、スタウトヴァイツェン、ケルシュザ・プレミアム・モルツ 香るエール、夜な夜なエール、ギネス
下面発酵中世以降広まった醸造方法で酵母がタンクの底に沈み発酵が進む。醸造温度は5度~12度程。
「エール」と呼ばれる。
ピルスナー
ボック
メルツェン
アサヒスーパードライ、キリンラガー、エビス、バドワイザー
自然発酵自然界の天然酵母を使用し自然発酵させる。ベルギーの「ランビック」
岩手県「いわて蔵ビール」

以下、上面発酵と下面発酵における各分類の説明および、オーストラリアで販売されている製品の主なスタイルを紹介していく。

上面発酵

上面発酵とは、上面発酵酵母を利用して醸造されるビール。醸造、発酵の過程で酵母が液体上面に浮かぶことからこの名がついた。
上面発酵のビールは、ビール醸造としては比較的高めの温度、20度前後で発酵がすすむ。そのため酵母の活動も盛んになり、短い 時間での発酵が可能となる。酵母の活動が盛んな為、その過程で発生する炭酸ガスも多量のものとなり結果、酵母が液体上面に浮かび層を作る。まさに上面で発酵されるのだ。醸造の為の酵母には出芽酵母が使用される。

醸造に関していえば上面発酵のもののほうが下面発酵のものより容易に行うことができた為19世紀ごろまではビールといえば上面発酵で作られたものをさしていた。また、この上面発酵で作られたビールはエールと呼ばれていた(エールに関しては後述)。上面発酵ビール(エール)の特徴として、その昔はホップを使用せずに製造していた事があげられるが、現在では苦味を加えたりその他の理由でホップが使用される。

味わいに関して言うとその一番の特徴としてまずは強烈な香りがあげられる。様々な花や、ハーブ、ティー、香水等とも表現され、その種類にもよるが非常に複雑で甘い香りが立ち上る。
実際に飲んでみても甘味、酸味、苦味のバランスは種類によってちがうものの、複雑に絡み合い深いコクをもつ豊かな味を感じることかできるのが特徴だ。日本国内で消費されるビールのほぼ全てがラガータイプの「ピルスナー」というものに分類される。このため、初めてエールを飲む人にとっては衝撃的でさえある。
上面発酵で作られたビールはその発酵される温度の20度前後で飲むのが風味や香りが立ち上り最も旨いとされており、実際に海外では常温に近い温度でも飲まれている。もちろん、当然冷やして飲む人もいれば、冷やして出される店も多い。日本国内ではぬるいビールをのむ習慣が無いため冷やして飲まれることがほとんどである。

以下、オーストラリアで飲まれる上面発酵のビールスタイルを紹介していく。

エール(Ale)

エールとは上面発酵で作られたビールの総称のことである。上面発酵で作られたビールとエールとは同意語と考えてよい。上記、上面発酵の項目で述べているとおり味や香りがラガービールよりも強く、特にフルーティーという言葉が最も的確にエールを表しているといわれる。その風味は洋梨であったり、柑橘系フルーツであったりとさながら白ワインを思わせる形容があるほどだ。また深いコクはスッキリと飲ませるラガービールとは全く異なりとても深い味わいが特徴でとなる。その昔は、ホップが加えられているものをビール、そうでないものをエールと呼び分けていたが現在ではこのルールは存在しない。
エールの中にも多くの種類が存在する。代表的なもので「ペールエール」、「インディアペールエール(IPA)」、「ブラウンエール」、「ダークエール」などがある。代表的なもの下でも紹介している。またこれも後述するが「オーストラリアンペールエール」という種類はこのサイトならではの紹介となるだろう。

ペールエール(Pale Ale)

エールにも様々な種類が存在するのだが、その中の代表的な種類がペールエールだ。

ペールとは、「色合いが淡い」などの意味がある。その名のとおりペールエールは色の淡い麦芽を使用し造られ、結果としてビールの色も淡いものになるといわれる。ただ現在の製品を見ると必ずしも色の薄いものばかりではなく、濃い目のものも多数存在する。世界的に見てももかなりメジャーな部類に入り、生産量は非常に多い。
ペールエールの最大特徴は「香り」「苦味」「味わい」である。
香りに関して言えば、高めの温度で発酵される際に非常に複雑な香りが生み出され、一言では「フルーティー」と表現されることが多く、またそれを紐解くとリンゴ、バナナ、洋なし、柑橘類、バナナ等やまたそれらが複雑に絡み合ったものであると言われる。
苦味に関しては使用されるホップの量が比較的多い為しっかりとした苦味の出ることが特徴となる。
最後に味わいであるが日本で飲まれる一般的なビールである「ラガータイプ」よりはストロングで濃い、コク深いものとなる。
日本のビールしか飲んでこなかった人に取っては非常に大きな印象をあたえることもある。

ペールエールの中でもオーストラリアで発展を遂げたものを「オーストラリアン・ペールエール」、アメリカで発展を遂げたものを「アメリカン・ペールエール」と呼ぶことがある。

日本でペールエールを飲むというと少し構えた印象やビール好きでおしゃれな印象を受ける方もいるかもしれないがオーストラリア国内では大変広く一般的に飲まれているスタイルであり、当然人気も高い。

アンバーエール(Amber Ale)

普段ビールを飲まれる方にも普段聞き慣れない言葉かもしれないが、「アンバーエール」はオーストラリア国内ではペールエールとほぼ同意語として用いられることの多い言葉であると言われており、ペールエールを単純にアンバーエールと表現することもあるようだが。*
しかし実際に「アンバーエール」の名前が付く製品を見るとアンバーモルトと呼ばれる種類の麦芽等を使用しビールの色合いを琥珀色、深みのある赤みのかかったオレンジ色(深い銅のような色)に仕上げたものや、軽くローストした麦芽を使用することにより深い色合いを生み出すもが多い。それ1つの独立したタイプと言ってよかろう。
文字通りアンバーとは英語で琥珀(琥珀色)を意味する。
*実際にはオーストラリア以外、フランスや北アメリカ等でもアンバーエールという言葉が用いられる

オーストラリアン・スパークリング・エール(Australian Sparkling Ale)

オーストラリア固有のスタイルとしてユニークなのがこの「オーストラリアン・スパークリング・エール」である。(または単に「スパークリングエール」という場合も同スタイルを指す)

こちらはオーストラリアで生まれた唯一のビールのスタイルであるといわれている。
発祥は現在オーストラリア国内大手ビールシェア3位のメーカー、クーパーズによるもので創業当時の1862年にはその製造法が確立されていた。

ボトルコンディショニングによる強い炭酸に加え軽快な飲み口、またボトルコンディショニングため瓶底に残るイースト菌の澱がある事が特徴となる。
本スタイルは、ビールの審査員を認定する世界的なの機関、ビール審査員資格認定プログラム、The Beer Judge Certification Program(BJCP)(*外部リンク)にて明確に定義されている。

本スタイルを定番品として提供しているのはクーパーズの以下2製品のみとなるがオーストラリアを代表する大手メーカーが造るものとしては非常丁寧に作りこまれ、味の評価もよく国内での人気は高い。

クーパーズスパークリングエール

クーパーズオリジナルペールエール

オーストラリアンペールエールAustralian pale Ale)

一般的に言われるビールのスタイルとしてオーストラリアンペールエールというものは存在しない。しかしながら海に囲まれた大陸で独自の進化を遂げた、オーストラリアとして一般的な特徴を持つペールエールがいつしかオーストラリアンペールエールと呼ばれるようになっている。
またブルワリーの製品名や、説明時状況に応じ単に「オーストラリアンエール」とよんだり「オーストラリスタイルのエール」等と表現されることがある。

実際に商品名としてオーストラリアンペールエールの名を持つものや、ビアスタイルとしてある製品をオーストラリアンペールエールであると紹介しているブルワリーが多く存在している。

製造方法や味わいについての具体的な定義は曖昧ではあるものの、一般的には苦味がやや強めでシャープな味わいそして色合いは一般的なペールエールよりも少し明るい、そしてクリスタルモルトが使われることが多い。
とは言うものの、ここは各メーカーが独自にその特色を打ち出しそれを「オーストラリアンペールエール(オーストラリアンエール、オーストラリアスタイルのエール)」と表現する。

オーストラリアのブルワリーが作ったビールを「オーストラリアンペールエール」であると主張すれば、それは間違いなく「オーストラリアンペールエール」なのである。

同様にアメリカで発展を遂げたペールエールは区別して「アメリカンペールエール」と呼ばれることがある。

ダークエール(Dark Ale)

上面発酵で作られるビールのうち色が通常のものより濃いもの全般を指す。その色は茶色から真っ黒なものまで様々存在する。
ダークエールが持つダークカラーは大麦や大麦麦芽(モルト)を深くローストすることにより茶色から黒色になった原材料を使用するために発生。

ダークエールの中で特に有名なものは固有の名前がついており下で説明する「スタウト」や「ポーター」等が存在する。それらもまたダークエールの1種と言える。 それ以外に色の着いたものはビールメーカ等が独自にダークエールと名前をつけて販売することもある。

インディア・ペールエール(India Pale Ale)(IPA(アイ・ピー・エー))

今や日本でも大変おなじみで、個性派ビール、味が濃いビール、クラフトビールと言えばこのIPAを連想される方も多い。
インディアペール・エールペールはその省略系から単にIPAと表記されることが多く読み方は「アイ・ピー・エー」となる。かつてはペールエールの1種に分類されていたようだが現在では完全に独立したスタイルとして扱われており、世界的にも一スタイルとして認知されている。オーストラリアでの人気も高い。

IPAの特徴は通常のペール・エールより華やかな香り、強烈な苦味、ストロングな味わいを持つことである。
インディアペール・エールが誕生した背景には18世紀頃、イギリスがインドを支配していた時代にまで遡る。
早くからインドへビールを輸出していたイギリスはその長い航行にいおいてより傷みにくいビールを求めていた。
その方法の1つとしてホップを多めに利用し発酵をしっかりと行うことにより保存性を高めたのだった。結果としてアルコール度数が高く、また苦味の強いビールが誕生した。

今日イギリスではインディアペール・エールというとアルコール度数の低いものを指すことが少なくないようだがこれらはあえて「イングリッシュIPA」と表記されることもある。
オーストラリアにおいては昔ながらのIPAを指すことが多く、アルコール度数は総じて高く、苦味、香り共に強い製品が一般的である。(日本でもIPAといえばこちらのスタイルを指す)

ちなみに世界で一番最初にインディア・ペールエールという言葉を使用したのはオーストラリアで最初に設立された新聞会社「The Sydney Gazette and New South Wales Advertiser(シドニー ガゼット アンド ニューサウスウェールズ アドバタイザー)」が1829年に発行した記事ではないかと言われている。
http://zythophile.wordpress.com/2013/05/14/the-earliest-use-of-the-term-india-pale-ale-was-in-australia/

またアメリカで栽培されるホップを使用しアメリカ国内で醸造されるIPAは「アメリカンIPA」と区別して表現されることも多い。

最近は多くのクラフトブルワリーがわざと濁らせたIPAを打ち出しており大変な人気を獲得している。
この濁りの事を、「かすんでいる」等の意味を持つ英単語を使い「HAZY(ヘイジー)」と表現しており、濁ったIPAは区別して「HAZY IPA(ヘイジー アイ・ピー・エー)」と呼ばれている。
このヘイジー IPA、現在は明確に1つのスタイルとして確立されているため、下で別スタイルとして紹介している。
ヘイジーIPAは製品ラベルにそれとわかるよう表記することにより、わざと濁りがある製品である事を主張している。ものによっては大変美しい黄色みを帯びており、まるでオレンジジュースやパインジュースを思わせる。
ちなみにこのHazy IPA、2018年にはアメリカで完全に独立したスタイルとして各種団体に登録されており、すでに爆発的な人気を獲得している。一方、オーストラリアでのブームは若干遅れている印象を受ける。
Hazy IPAは日本でもクラフトビールファンの間では人気が高い。

XPA(エックス・ピー・エー)

XPA(エックス・ピー・エー)はオーストラリアでは2012年頃から使われ始めたスタイルの1つである。しかしオーストラリア国内においてこのスタイルの明確な定義はなされていない。
確実であることといえば、XPAは「Extra Pale Ale(エクストラ・ペール・エール)」の略であることで、上記で紹介しているスタイル「ペール・エール」のエクストラバージョンという位置づけだ。
一般的にはペール・エール以上、IPA(アイ・ピー・エー)未満との認知が高く、それは、バランスの取れたペールエールよりはホップの主張が強くしかしIPAほど図太くアルコール度数が高いわけではない、そんな仕上がりになることが多い。
しかし、繰り返しになるが、XPAについては明確な定義がなされていないためメーカーがXPAとして売り出せばそれはまさにXPAそのものと言えよう。
クラフトブルワリーのみならず大手メーカーもこのXPAを打ち出すようになってきており、若者やクラフトビールファンに大変人気が高い。

スタウト(Stout)

スタウトとは、ローストされたモルトや、大麦を使用してかつ基本的には、上面発酵にて醸造されたビールの事をさす。世界的に最も有名なアイルランドで生産される漆黒のビール「ギネス」をご存じの方は多いことでしょう。

スタウトはよく「黒ビール」と混同されることがある。世界的にはスタウトは上面発酵、黒ビールは下面発酵のラガーに分類され、そもそもの製法が異なった種類となるが、日本国内においてのビールの取り決めではスタウトを名乗るのに必ずしも上面発酵である必要はなく、下面発酵にて作られたビールで「スタウト」を名乗る商品も存在する。ただ、繰り返しになるが、世界的にみればスタウトは上面醗酵のみとされているためこの分け方には、議論が残るところだ。

味わいは非常にストロングかつ濃厚で、苦味や酸味も強い。その醸造さ加減、日本人にとってはどこかじっくりと寝かされた醤油を思わせる旨味すら感じることがある。ローストされたモルトや大麦の香ばしさが素敵な香り、風味を演出する。

Stout(スタウト)という言葉はそれだけで「スタウトという種類のビール」の意味もあるが、もともとは「強い」や、「頑丈な」等の意味があり、これは後述するポーターという種類のビールのアルコールが強いものを「スタウトポーター」とよび、のちにポーターの言葉がとれ、スタウトだけになったためだ。
その名のとおり、ポーターより強めの味が特徴でスタウトが誕生した当時のイギリスで飲まれていた頃はアルコール度数は7%~8%にのぼるものであったが、現在は様々な種類のスタウトが存在し、アルコール度数は4%程度のものもある。また現在では、元祖のポーターよりもスタウトのほうがビールとして有名なスタイルとして定着した。

スタウトの色はローストされたモルトや大麦を使用するため黒色となるが、茶褐色からリッチブラックを思わせる本当に黒々としたものまで様々である。
オーストラリア国内では日本に比べかなり一般的に飲まれており認知度、人気ともに高い。

ポーター(Porter)

ポーターとはスタウトと同じく黒色をしたビールで、スタウトの原型となったビールである。

ポーターの名が使われるようになったのは18世紀。ロンドン、テムズ川周辺で荷物の運び屋、ポーター、達に人気があったためその名がつけられるようになった。
このビールの由来は、古くなったトゥーペニー(Twopenny)と呼ばれる安いビールの味をフレッシュなものにするため、それにエールとラガーをまぜて飲まれていたところからはじまる。 この、3種類のが混ぜられたビールはスリー スレッド(Three Threads)の愛称で親しまれていた。 このスリースレッドが後に製品化されポーターと名付けられた。

ポーターのなかでも特にアルコール度数の高いものは「ダブルポーター」「エクストラポーター」「スタウトポーター」等と呼ばれるようになり、後にスタウトポーターだけがスタウトとして、独立した道を歩むこととなった。こちらの項目で上面発酵ビールにカテゴライズしたが、現在多くのポーターば下面発酵でも生産されており、その名前だけでは醸造方法を特定することはできない。

ビター(Bitter)

ビターとはもともと英国(イギリス)で使われていたビールスタイルの呼び名で実際には上で説明したペールエールと同じものを指している。その名前から苦味のあるビールの分類だったり、苦味を特徴とした製品であると想像される事が多いが、実際は必ずしもそうではない(ペールエールなのだから)。

このページでビターを紹介した理由はもっとべつのところにある。オーストラリアで生産・消費されるビールの中にもビターと名の付くものが多数存在ためだ。
最も代表的なものが、オーストラリア国内で最大級の消費量を誇るビール「ビクトリアビター(Victoria Bitter)」である。名前に「ビター」と付くために、上で説明したビター、つまりペールエールのことだ思われることが時々ある。
しかしこのビクトリアビターは上面発酵のエールではなく、下面発酵のラガーなのである。ラガーなのだが商品名に「ビター」と付く。こういった製品がオーストラリアには多く存在する。

その他「トゥーイーズ(Tooheys)」ブランドの「トゥイーズ レッド ビター(Tooheys Red Bitter)」や、「XXXX(フォーエックス)」ブランドの「XXXX bitter(フォーエックス ビター)」をはじめとした有名なビールから無名なものまでビターと名が付くが実はラガーであるものが多数存在する。

小麦ビール、ヴァイツェン(Wheat Beer, Weizen

小麦ビール、または白ビール、はその名前の通り原材料に一定の割合で小麦を使用するビールを指すが一般的なビールの材料である大麦麦芽も使用されることが多い。基本的には上面発酵である。
小麦の英単語「wheat」から「ウィートビア」と表記されることもある。

白ビールの生産で有名な国はベルギーやドイツでその種類も多くのものが存在するが日本国内では「ヴァイツェン」とう名称が有名になっている。
ヴァイツェンは南ドイツ地方で造られる白ビールで原材料の50%以上が小麦である。
ヴァイツェンに代表される白ビール最大の特徴は苦味が少ないこと、そして非常に香りが強いことで特にバナナやバニラの香りと表現される独特の風味を持ち合わせ、こちらも日本のビールのみしか飲んでない人が飲まれると衝撃を受けるほとである。ちなみにヴァイツェンはドイツ内の醸造されるエリアによってはヴァイスビアと呼ばれる。

オーストラリア国内で見られる白ビールの種類はwheat beer(小麦ビール)かHefeweizen(ヘーフェヴァイツェン)が一般的である。
ヘーフェヴァイツェンはヴァイツェンの製造方法で作られたビールでかつ濾過工程を経ていないものを指す。それゆえビールが白濁しており、これがまた魅力と捉えられている。
製造・販売される銘柄はそれほど多いものではないながらも、有名な製品は幾つか存在していおり、総じてそのクオリティーは高い。

パシフィックエール(Pacific Ale)

パシフィックエールという名前はオーストラリアが発祥で、2008年にニューサウスウェールズ州のバイロンベイにて操業されたストーンアンドウッドブルーイングカンパニーが2010年に「パシフィックエール」という製品の販売を開始したのが始まりとされる。
2024年現在、正式なビアスタイルとして認定されているものではないがすでに上で紹介しているXPAを含めオーストラリア固有のスタイルとして(オーストラリア)国内では広く認知されている。

パシフィックエールは麦芽やホップをはじめとした原材料をオーストラリアとニュージーランド産に限定したものを使う事や、原材料に小麦を含むこと、太平洋の近くで醸造されている事など、業界でも定着したある程度の基準が設けられている。
基本的にはペールエールからの流れをくむものとなるが、味わいの特徴としてとにかく言われるのは「トロピカルな仕上がり。」という事だ。もちろんメーカーによっても異なるが、パッションフルーツ、マンゴー、パイナップル、柑橘系等の強いフレーバーを持ちながら小麦の甘さ、印象的なホップの苦味に加えミディアムボディーに仕上がるものが多く、IPAのように強すぎた苦みを持つという事もない。
このパシフィックエールから派生してオーストラリア固有のスタイルとしてトロピカル・エールやサマー・エールという(こちらもアンオフィシャルな)スタイルが見られるようになった。これらの特徴も概ねパシフィックエールと同等ものがあげられる。

ヘイジー(Hazy IPA)

ヘイジーIPA(Hazy IPA)は、アメリカのIPAから派生したビアスタイルであり、2018年にビアジャッジメント・サーティフィケーション・プログラム(BJCP)と呼ばれる、アメリカのビール団体によって正式に認定された。このスタイルは、アメリカのニューイングランド地方で誕生したあと、世界中で急速に人気を獲得した。特徴は、その名前の通り「ヘイジー」、つまり濁りがある事であり、これは麦芽やホップ、酵母の影響によるものである。アロマとフレーバーには、マンゴー、パイナップル、シトラスなどのトロピカルフルーツの香りが強く、ホップ由来のフルーティーな味わいが前面に出る。また、口当たりが柔らかくクリーミーで、通常のIPAよりも苦味が控えめで飲みやすいのが特徴だ。濃厚でジューシーな味わいと、バランスの取れた甘みと酸味が感じられ、クラフトビール愛好者の間では特に人気が高い。
ヘイジーIPAは、そのビジュアルのインパクトと、香りや味わいのユニークさが評価され、ビールイベントや専門店でも注目されるスタイルである。これらの特性が、このビールを新たなスタンダードに押し上げている要因であると言えるだろう。
ヘイジーIPAについては専用のページを設けている為、ぜひともそちらを参考にしてほしい。

下面発酵

下面発酵とは下面発酵酵母によって、5度~12度程の低温で5週間前後の期間じっくりと熟成させて作られるビール。低温で作られるため、酵母の活動がゆっくりと行われ熟成の最終段階で酵母は下面に沈む。それが名前の由来となった。長いビールの歴史において下面発酵は比較的新しい製法とされ、最初にこの製法が用いられたのは15世紀頃のドイツであると言われている。

製造されるビールの色合いは、本来は淡色で明るいものが特徴であったが、現在製造されるもには淡色がら、中濃色、濃色まだ様々あり、その色だけで上面発酵か、下面発酵かを特定するには至らない。

味わいに関していえば、スッキリ、切れがある、サッパリ、マイルド。等と表現され、上面発酵のような複雑な香りはないか、喉ごしがよくサッパリ軽やかな風味はとても飲みやすい。 また、下面発酵のビールは、製造時と同じくらいの温度で冷やして飲むのがうまく、これが飲みやすさに拍車をかけている。

以下、オーストラリアで飲まれる下面発酵のビールスタイルを紹介していく。

ラガー(Lager)

その語源はドイツ語の「貯蔵する」という言葉「lagern」が転 じ、後にラガーと呼ばれるようになった。 一般的には下面発酵で作られたビール全般をラガーとよぶが、日本国内の定義では、「貯蔵の行程で熟成されたビール」の事をさす。日本国内では、ほぼ全てがラガータイプ等と言われることもあるが、これは正確ではなく、正しくは下で説明するピルスナーに属する。
しかしながら実際はオーストラリア国内でもこの辺りは曖昧になっておりラガータイプピルスナースタイルのものであっても単に「ラガー」として販売される商品は多数存在する。
この辺りはオーストラリアのおおらかな国民性もあり、実際どうでもよいのである。
ちなみにラガースタイルのビールが世界で最も消費されているビールとなる。オーストラリアでも最も生産、消費されているスタイルで昔から現在に至るまで大変人気が高い。 オーストラリア国内でラガービールが最初に生産されたのは1800年代の終盤になってからであった。

ピルスナー(Pilsener)

ピルスナーとは、チェコのピルゼン地方で1800年代頃、下面発酵のビールが作られた時から発達した1スタイルのビールである。

当時、下面にて発酵する酵母が発見されたあと、涼しい洞窟にてビールを保存していたところビールの透明度が上がり、長持ちするとこがわかった。その当時た作られたビールはピルスナーウルケル*とよばれ、現在でもつくられていおり、ラガースタイルのビール醸造方法の基礎として定着した。
*2024年現在アサヒグループホールディングスが本ブランドを所有している

ピルスナーの名前そのものは、上記、チェコのピルゼンに由来し、 現在日本で生産されるほぼ全てのビールがこのスタイルに属している。 きめ細かい泡や、美しく透明感のある黄金色、切れのあるのみくち、比較的強めのホップの苦みが心地よく、非常に飲みやすいのが特長である。

オーストラリアにももちろん多くのピルスナータイプのビールが存在する。日本国内のようには同じピルスナーでも各社工夫をこらし様々な味わいのものがあり面白い。

その他の分類

ドライ(Dry)

ドライビールの発症は1987年、アサヒスーパードライの発売を開始した日本だと言われており、その後1990年にアメリカにわたり世界各国へ広まっていった。

ドライビールの明確な定義は存在しないが、一般的には辛口でアルコール度数の高いビールがこうよばれる。発酵の過程では酵母の活動により糖分がアルコールへと分解されるのだが、ある程度糖分が残された段階で最終工程に入り、出荷されればその段階で酵母の働きがなくなる為、甘味や麦芽の香りなど感じさせるビールとなる。
しかし酵母の働きを止めず麦芽の糖分をずっと分解させ続ければ、次第に糖分はなくなりアルコールの高いビールが出来上がる。 これらのビールがドライビールとよばれている。
上記のとおりドライビールは麦芽糖分を酵母が食べ尽くすために、麦芽香りや味わいは少なくなり、ホップの苦みが強調されたビールとなり、後味にフレーバーを残さずにスッと消えていくものが多い。

オーストラリアでもドライビールの明確な定義はなく上面発酵、下面発酵のどちらで作られていても辛口な仕上がりであれば「ドライなビールだ」と表現されることはある。 しかし、製品名に「ドライ」と名が付くものに関してはほとんどすべてが下面発酵(ラガー)となる。
オーストラリアでドライビールの先駆けとなったのは2006年、当時のライオンネイサン(現、ライオン)から発売されたハーンスーパードライである。この後ドライビールが爆発的人気を呼び、オーストラリアでの1つのジャンルとして確実に定着した。
現在ドライビールで最も売れている製品はカールトンドライ(Carlton Dry)トゥーイーズエクストラドライ(Tooheys Extra Dry)である。

ドラフト(Draught)

ドラフトとは、日本国内で言うと樽詰されているビール、ビアサーバーから注がれるビール全般を指すとともに、非加熱処理のビール、つまり生ビールと同意語で使われることが多いが、本来はドラフトと生ビールなイコールではない。 この辺りの表現定義は国によってまちまちである。

オーストラリアでドラフトと言えばビアサーバーから注がれたビールのことを指すが、ドラフトと言う表現よりも一般的には「Tap(タップ)」という表現が用いられる。 タップとは、本来「蛇口」の意味があるがケグ(ビアサーバー)から注がれるビールはまるで蛇口から注ぐかのようにみえるため、このようによばれる。
例えばオーストラリア国内のパブ等に行った場合で、「VB」というビールをビアサーバーから注いだもので飲みたい場合「Can I have a pint of VB on tap, please.」等と言う事になる。ちなみに翻訳すれば「VBをビアサーバーから注いだものでください。」というような感じである。 こうすれば瓶ビールや缶ビールで出てくることはない。

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