基本情報
名称 | クーパーズXPA(エックス・ピー・エー)(Coopers XPA) |
産地 | 南オーストラリア州 アデレード |
ビアスタイル | XPA(エックス・ピー・エー) |
アルコール度数 | 5.2% |
IBU | 37 |
EBC (SRM) | 13 (7) |
タイプ | フルストレングス |
醸造所 | クーパーズブルワリー(Coopers Brewery) |
クーパーズXPA 概要説明
クーパーズXPA(エックス・ピー・エー)はクーパーズブルワリーが販売する上面発酵のビール。単に「エックス・ピー・エー」と読んでもよいし、正式名称の「エクストラ・ペール・エール」と読んでしまってもよいだろう。
本製品、XPAは2019年7月に販売が開始された。創業1862年からの歴史を持つクーパーズにとってはごく最近の仲間入りだ。
クーパーズは、その品質と味わいにおいて昔から非常に評判が高かった。
1990年頃には、他の大手が造る大量生産ラガーから、もっとこちらに取って代わられるべきビールと期待されていたしメーカー自身もそれを予想していた。
しかし、2000年頃からジワリと増え続けるクラフトブルワリーにより、新しい味を求めるファンを奪われていくと同時に、他の大手メーカーも時代に合わせた新製品を打ち出すことにより、シェア拡大を狙っていった。
この「クーパーズXPA」を打ち出す1年前の2018年に、同社売り上げが前年比で約9%も減少するという、24年ぶりのセールス落ち込みに見舞われていた。
「流行のブランドに流れたビール愛飲者たちを何とかして呼び戻したい。」
そこで考え出されたのが、2012年頃からオーストラリア国内で少しずつ見られるようになり、流行の兆しを見せ始めたビールスタイルの1つ「XPA(エックス・ピー・エー)」だ。
これはアメリカンペールエール*とインディアペールエール(IPA)の中間に位置するビアスタイルで、この頃、同時に流行りを見せ始めていたIPAでは「too much!」という層と逆にペールエールよりはどっしりとくる味わいを求める層に大変な人気を獲得し始めていた。
*ペールエールの中でもアメリカで発展を遂げたスタイルは区別して「アメリカンペールエール」と呼ばれている
単にスタイルを流行りのものにするだけではなくクーパーズとしてのこだわりも見せた。
アメリカンホップのシムコーに加え、レモンドロップ、グレープフルーツ、レモン、ほのかなマンダリンのアロマで明るい柑橘系のニュアンスを与える等の挑戦や、それを安定した味わいにまで仕上げる努力の結果、国際苦味単位(IBU)を37に、またアルコール度数はオーストラリア全般のビールからするとやや高めの5.2%の満足のいく製品を完成させた。もちろんクーパーズにてお約束となっている製法、缶に詰めた後にも醗酵が続くナチュラル・コンディションや、添加物や保存料を一切使わないという点は変わっていない。
本製品、実は販売の2か月前、オーストラリア国内で開催される大規模品評会の1つ「グレートオーストラリアン ビア スペクタピュラー*(Great Australasian Beer SpecTAPular)」通称「ギャブス(GABS)」にてテスト販売を実施、また同時に周辺のホテルでも提供を開始した。会場にて瞬く間に売れ続けるXPAを見て、関係者たちは成功を確信した。
*「スペクタピュラー(SpecTAPular)」は造語であり、スペシャル(Special)なタップ(TAP)つまり生ビールを注ぐサーバーの事とスペクタキュラー(spectacular)、「素晴らしい・壮大な」の単語を掛け合わせたものとなる
クーパース・マーケティング・イノベーション・マネージャーのキャム・ピアース氏(Mr. Cam Pearce)は以下のように語った。
「XPAはビールのカテゴリーとしてまだ発展途上であり、クーパーズはそのビアスタイルの高品質な例を提供するためにこのビールをリリースした。」
これまでクーパーズの代名詞といえばスタビーで販売される瓶ビールだ。瓶内でビールを二次醗酵させ、酵母の澱が透けて見えることは大きな魅力でもあった。しかし、本製品は紫色の缶のみで販売という事も決定。クーパーズが見せる挑戦の姿勢でもあったが、実はこの頃からオーストラリアでも缶ビールの流行を見せており、同社も敏感にそれに反応した形だ。若者を中心とした流行に敏感なユーザーを取り込む、クーパーズの意地も見ることができた。
クーパーズXPAの味わい
それではこの新しいスタイルXPA、これがどれほどオージークラシックなメーカー、クーパーズにマッチするか迫っていこう。
まずは美しい紫色の缶から勢いよくビールを注げば程よく濃いめな、ややオレンジ寄りのゴールデンカラーにふんわりとしたいかにもクーパーズな泡。いい感じである。
注いだ時点でホップのアロマを十分に感じ取ることができるがそこはXPAだけあってやさしめである。IPAのように強烈なものではないが、程よい複雑さ加減を見せる。オレンジ、やさしめのグループフルーツ等柑橘系に加えピーチのようなまったりとした雰囲気もよい。甘めのモルト感がその後を追いかける感じか。
さて口に含むとこれもまたXPAを十分に感じ取れる味わいだ。これもまたIPAのように強すぎないしかしそれでいて通常のペールエールよりは圧倒的に複雑かつホッピーなフレーバーが押し寄せる。香りで感じるフルーティー感がそのままに程よい口当たりに深いコクと滑らかな質感をもたらす。強めの炭酸が大変リフレッシングであるものの麦芽の甘い余韻がいつまでも残りこの点はうれしい。一方で5%を超えるアルコール度数がドライな感覚も残す。おもしろい。ボディーはややフルボディーに寄せたミドルボディー。やはりこのてのフレーバーフルなビールはまずは食事と合わせずにビール単体で楽しみたくなる。 クーパーズの次世代を担う新しい挑戦が見て取れる大変素晴らしいビールだ。