基本情報
名称 | クーパーズエクストラストロングヴィンテージエール (Coopers Extra Strong Vintage Ale) |
産地 | 南オーストラリア州 アデレード |
ビアスタイル | ダークエール |
アルコール度数 | 7.5% |
IBU | 65 |
EBC (SRM) | 30 (15) |
タイプ | フルストレングス |
醸造所 | クーパーズブルワリー(Coopers Brewery) |
クーパーズ エクストラストロングヴィンテージエール概要説明
ビールにとって「最高傑作」とは何だろうか。その答えは千差万別だ。
ビールにおいても100人全員が口をそろえ「最高にうまい」とよぶ製品はない。それぞれの好みや環境、タイミングによっても意見は変わるものだし、多くの人がうまいというビール、イコール「最高傑作」とはならない。
一つの答えはこうだ。
それは醸造家がどれだけその製品に思いを込め、こだわり、考えぬいた末、その魂を一杯のビールに注いだか。その情熱が形になったときに人はそれを「最高傑作」と呼ぶのではないか。
シーズナル(Seasonal)つまり、季節限定品として販売される「クーパーズエクストラストロングヴィンテージエール」これはまさしくクーパーズブルワリーのみならずオーストラリアのビール業界が誇る最高傑作の1つ。そう呼べる作品であろう。
1998年より醸造が開始された本作、当時の醸造責任者を務めたクーパーズファミリーの5代目代表、Dr. Tim Cooper(ティムクーパー博士)*の、「新しい試みをしよう。」という発案で誕生した。
*薬学の博士を持つティムクーパー氏は2024年現在醸造部門のトップ及び取締役を兼任中
上面発酵にて醸造されるストロングタイプのエールで、その名の通り7.5%にまで高められたアルコール度数は「エール」に分類されるスタイルとしてはオーストラリア国内はもとより、世界中でも高い部類に入り*、このビールを特徴づけた。本製品の発売当初はもう少しアルコール度数が低かったが年々の改良により現在の度数まで引き上げられた。
*一般的なイングリッシュペールエールの平均アルコール度数が約4.7%、スタウトは6.0%前後、IPAでも6.5%程度となる。
毎年厳選したホップ、大麦・小麦麦芽を使用。その産地はオーストラリア国内にとどまらす、よいものがあれば様々な国のものをチョイス。これまでニュージーランドやチェコ、その他多くの国のものが使われた。
「もし、最高のワインと同等の評価をビールに施すのなら、最高傑作は間違いなくこのクーパーズエクストラストロングヴィンテージエールだろう。」と公称するほどその製造に磨きをかけており、クーパーズお得意の製法、瓶の中でのナチュラルコンディショニング二次発酵がさらに進んでいく。
24ヶ月程は寝かすことができるといわれており販売直後のダイナミックでアタッキーな味わいから、寝かした後のそのまろやかな深い味わいまで様々な楽しみかたがある。
人によってはさらに数年、合計5、6年寝かしたものが最もうまいと言うが程度のよい古いヴィンテージを探すのは大変むつかしい。
毎年8月前後に数量限定でその年のビンテージがリリースとなる。オーストラリア国内ではビール業界だけではなく、多くのビールファンが待ち望んでいる瞬間だ。
ちなみに本製品は長年にわたり「クーパーズエクストラストロングヴィンテージエール」と名付けられていたが2020年頃から「クーパーズビンテージエール」へと名称変更されている。
しかしウェブサイト内の正式なタイトルは引き続き「クーパーズエクストラストロングヴィンテージエール」となっていることや、この製品が1998年から続く一連の製品であることはサイト内でも語らており、今後も少なからず名前やデザインのアジャストは発生するものと考えている。大きな名称変更が名称変更がない限りは引き続き本サイト内では「クーパーズエクストラストロングヴィンテージエール」の名称を使用していく。
クーパーズ醸造家達のこだわり
ワインのようにヴィンテージ感を前面に出した。
その年ごとに材料を徹底的に選び抜き、醸造方法にもこだわった。常に改良が加えられ、年々その年品質は向上を続けた。
必ずしも毎年生産されるわけではなく、素材の品質に満足できなかったりその他の条件がそろわず品質を確保できない場合は生産を諦める年もある。確実に良いものを届けたいという思いだ。そのポリシーに基づき2002年、2003年、2005年は製造が見送られた。
素材の選択には毎年必ず十分な理由を置いた。
一例をあげよう。
2018年のビンテージには南オーストラリア州カンガルー島で栽培されたWestminster(ウェストミンスター)麦芽を単一品種にて使用。一部深い焙煎を施し、ダーククリスタルモルトとしてそれらをブレンド。ホップにはフランスのアルザス地方から取り寄せたAramis(アラミス)軸に味わいを決めた。
2018年は本製品が初めて登場してから20年の節目を迎えた。これらの原材料をもとにクーパーズが持つ特徴的イメージを踏襲しながらも20年目としてふさわしい攻めの姿勢を見せた。本製品で単一麦芽による醸造は初めての試みだったが、結果、美しい銅色を呈す軽くて甘い麦芽の風味にアラミスの極めて特徴的な味わいが組み合わさり最高の仕上がりを見せた。
2019年のビンテージには南オーストラリア州のMurray Mallee(マレー マレー)で生産されるCompass(コンパス)麦芽を使用し、一部ダーククリスタルモルトとして配合。2018年はこの地域の大麦の収穫が悪かったがこの年は本製品委ふさわしい出来だったための選定となった。結果甘いモルトとタフィーの風味が特徴的な素晴らしい仕上がりを見せた。
ホップの選定には4、5種類のホップを試すセッションを2度実施。その中から選定された品種をさらに2度のセッションで厳選。この年は、2012年にアメリカで開発されたMosaic(モザイク)を単一で使用することを決定。毎年、醸造家やマーケットの期待に応える素晴らしい進化を見せた。
クーパーズエクストラストロングヴィンテージエールの味わい
ではその味わいはどうだ。
まず大前提として、このビールは各ビンテージによってその味わいが大きく異なることに加え、同一ビンテージであっても保存状態や飲む時期、つまり製造からどれ位経っているかによって大きく姿を変えるということにご注意頂きたい。
今回ここでのレヴューが必ずしも皆様の味の状態と同じとは言えないのである。
その点は本当にワインのような繊細なビールと考える事ができる。
グラスへ注いでみるとオレンジアンバーカラーの美しいビールが姿を現す。しかもとてもマディーだ。これは他のどのクーパーズのビールも持つ特徴である。
泡はクリーミーでしっかりとしており他のビールに比べてその形状を長くとどめている。
最初に感じるアロマは心地よいホップのそれが立ち上ぼりシトラスやパッションフルーツを思わせると共に、強めのアルコール度数がしっかりと酒であることを主張。どこか上質なホワイトワインを思わせる。
口に含んでみると先程の爽やかなフルーティー系の香りからは一変。急にコク深いリッチで極めて複雑な顔を見せるビールであることをうかがわせる。
この複雑さは長く寝かされていればいるほど増していくようだ。
ファーストアタックにてまずは甘辛系の味が顔を覗かせる。それはカラメルやチョコレート、誤解を恐れずいうならば上質な醤油のような一面も見せパリッとしたスパイシー加減も機嫌がいい。
力強いモルティーかつホッピーな味わいが中心にしっかりとあり、あぁなんて素晴らしいビールなんだと感動を覚えずにはいられない。
鼻に抜けていくフィニッシュには強めのアルコールを感じさせながらほどよい酸味と苦味が最高の余韻を残す。
その間コーヒーやバニラアイス、ハチミツトーストの香ばしさなどの複雑さも見逃せない。
一言で言えばとにかくうまい。メジャーブルワリーが作るオーストラリアビールの中では間違いなく最高の味わいであろう。
最高の楽しみ方
クーパーズ エクストラストロングヴィンテージエールはぜひ最高のコンディションで試して頂き、その素晴らしさを存分に楽しんでいただきたい。
以下にいくつかおすすめの注意点を記した。
- 時間をかけてゆっくりお楽しみを
このビールは夏にカキンと冷やしてのど越しでがぶ飲みするようなビールでは決してない。
舌の上で交わる複雑な味わい、鼻から抜ける深い香りを時間をかけてゆっくり楽しむのがおすすめである。
ぜひとも暖かい部屋でチビチビとやっていただきたい。
- 冷やしすぎず楽しもう
もともとエールは高めの温度で飲むものとされているが、このビールはまさにその典型である。
暖かければ暖かいほどその香りに花が咲く。しかしながら、日本人にとって生ぬるいビールは馴染みのないということを考慮し、12、3度位がベストではなかろうか。
夏場は冷蔵庫に入れて1時間~1.5時間程冷やす、冬なら常温でそのまま飲んでも最高の状態が楽しめる。
- グラスに注いでお試しを
出来ればいっぺんににボトル一本注げるだけのサイズでなるべく口の広い物、それこそ大きめのワイングラスあれば十分にその役割を果たすと思われる。
空気に触れることでこれまで瓶の中で発酵を続けていたビール達が一気に目覚めその香り、味わいを爆発させる。
- 保存方法に十分気を使おう
本製品は瓶で2年程まで寝かしても十分うまいといわれている。瓶での熟成をさせたいならワインと同等の扱いをもって保存して頂きたい。
それが不可能であれば購入後すぐに飲まれたほうが間違いなくうまい。
またもしオーストラリアにて本製品を購入される場合は6本パックにて購入し、時間とともに複雑さを増すその味わいの変化をぜひともお試しいただくのがよいだろう。