基本情報
名称 | ストーン & ウッド パシフィックエール (Stone & Wood Pacific Ale) |
産地 | ニューサウスウェールズ州 バイロンベイ(Byron Bay) |
ビアスタイル | パシフィックエール |
アルコール度数 | 4.4% |
IBU | 30~45 (非公式) |
EBC (SRM) | No Data |
タイプ | フルストレングス |
醸造所 | ストーン&ウッドブルーイングカンパニー (Stone & Wood Brewing Co.) |
ストーン&ウッド パシフィックエール概要説明
ストーン&ウッド パシフィックエールはオーストラリアに存在するクラフトブルワリー、ストーン&ウッド(Stone&Wood)が醸造する製品の1つ。コア・レンジと呼ばれる通年販売される定番品で、クラフトビール*としてはオーストラリア国内では極めて知名度が高く大変人気がある。
*同ブルワリーは大手ライオンに吸収され現在は大手メーカーの一員だが、いまだクラフトブルワリーという位置づけを貫いている
「パシフィックエール」は製品名ではあるものの、2024年現在オーストラリア国内では非公式ながらビールスタイルの1つとしての位置を確立するまでに知名度を上げた。生みの親は本ブルワリー、ストーン&ウッドで、現在はパシフィックエールというスタイルのビールがクーパーズの「パシフィックエール」を始め各社から販売されている。
元々はオーストラリア国内最大手のビールメーカーカールトン&ユナイテッドブルワリーズ(CUB)に勤務していた3名の社員がが2008年に立ち上げたブルワリーで、当初樽生で地域の飲食店やパブなどへビールを提供するのみだった。2010年にこのパシフィックエールの販売を開始、あまりの完成度の高さに爆発的に知名度を獲得、クラフトビール製品としては知名度No.1と言われるくらいにまで上り詰めた。
パシフィックエールの「スタイルとしての特徴」として挙げられるのがその名の通りパシフィック(太平洋)を臨むスタイルにこだわっている点だ。原材料はオーストラリア産かニュージーランド産に限定し暑い日差しを浴びるオーストラリアの気候に合う飲み口を目指した。強烈な柑橘類系のフレーバーが印象的ではあるが、しかしアルコール度数はあえてやや控えめに、トータルバランスとしてはミディアムボディーとなるところだろう。また甘みを増すためと思われるがパシフィックエールには一般的な麦芽に加えて、基本的には小麦麦芽も使用される事が一般的となっている。
本製品、原材料にももちろんこだわっている。
麦芽には、厳選されたオーストラリア産のペールモルトやロールされた小麦麦芽*を、ホップはこれまたオーストラリアのビクトリア州産、タスマニア州産のギャラクシー*ホップを使用。仕上げにドライホップ*と呼ばれる製法で、追いギャラクシーを実施、本パシフィックエールを特徴づける強烈な柑橘香を生み出した。
*ロールされた小麦麦芽:
オーストラリア産のロール小麦は、小麦を蒸して平たいコーンフレークのような形に仕上げたもの。適度に蒸気を加えながら同時に蒸すことにより小麦穀粒の酵素を失活させ、重いローラーで平らなフレーク状に圧延。それ以上の加工や予備調理などを行うことは無い。このため全粒粉の栄養が保持されている、結果豊かで味わい深いビールを生み出すことに一役買っている。
*ギャラクシーホップ:
2009年頃から世界に登場したオーストラリア原産の非常に香りが強いホップ。世界中にクラフトブルワリーから活用されている。
*ドライホップ製法:ドライホッピングとは、煮出した麦汁が冷めてた後にホップを加え、アロマと風味を向上させる醸造技術である。ホップはビールの中で蒸らすが、これはティーバッグを水に入れるのと似ている。ドライホッピングは、ビールに花のようなホップのエッセンスと強烈な風味を与えることができる。
工程の後半、追加でドライホップを行う場合もある。
品評会での常連入り
これだけの人気を誇るパシフィックエールはもちろんビール品評会での常連入りだ。オーストラリアではその出来栄え人気をうかがい知るのに最も知られる品評会の1つに「グレートオーストラリアンビールスペクタキュラー ホッテスト 100(GABS Hottest 100)」というものがある。
こちらは毎年最も素晴らしいビール銘柄を100種類選出するというものだ。この大会において、2019年、2016年、2015年に本製品は第1位を獲得している。それ以外の年であっても2位、3位、と10位以内の常連となっている。本製品、パシフィックエールがいかに素晴らしいかうかがい知ることができよう。
ストーン&ウッド パシフィックエールの味わい
パシフィックエールのテイスティングノートの紹介だ。
【見た目】
最初はグラスにたたくようにその後、ゆっくりと注いでみる。非常に明るいパインジュースを思わせる鮮やかなイエロー。非公式では30~45くらいのIBU(いろの濃さ)と推測されているがそれよりももう少し明るい印象だ。
程よい濁りが特徴でIPAなどでも流行っている「ヘイジー」なアピアランス。グラス表面に浮かぶ泡はやや粗目で、早い時間で消えゆき、薄いレイヤーへと姿を変える。
【香り】
注いでいる瞬間から非常にきらびやかな柑橘類の香りが立ち上る。グラスにぐっと鼻を近づけてみるとすぐさまオレンジ、レモン、ライム等のさわやかさが前面に、さらにそこからゆっくりとマンゴー、パイナップル、ピーチに加えクリーミーな甘さがゆっくりと全体をまとめるように包み込む。しかし全体に強烈すぎず、あくまでのビールの中に感じるホップ、モルト感というところだ。
【味わい】
それではぐっとビールを一気に飲んでみる。味わいはどうか。
香りに受ける印象そのままに非常に明るい柑橘類とレモンの香りがまずは印象的だ。その後にわずかなマンゴー系が、そしてゆっくりといやさしい苦味が後ろからググっと現れる。その後に爽やかなパイナップルのような酸味が引き立ち、飲みやすさと爽快感を高めている。クリーミーだが甘すぎないモルトの風味が口の前のピリッとした風味を引き立てる。全体的には味わいはミドルボディーか。モルトのクリーミーさやしっかりとした炭酸の感じもあり、大変な勢いを感じる。
【総評】
一言で言うならば非常にフルーティで華やかなビール。これを飲んでいるだけでまさに気分が上がってくる。また単にフルーティに寄せたという事ではなく、その中にはさまざまな複雑さに加え、麦芽の穀物感やボディーもしっかりとあり飲みごたえも十分だ。まさにオーストラリアのクラフトビール・シーンを象徴する、こだわりぬいたビールといえよう。